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ナデック通信

2022年
12月号

改正職業安定法まるわかり解説

 10月1日施行の改正職業安定法は、職業紹介などの人材ビジネスを営む会社のみならず、あらゆる求人者や求職者に大きな影響をもたらしています。新たに「特定募集情報等提供事業者」が定義づけられて開業時や毎年の報告書の届出義務が課せられ、求人情報などの的確な表示義務などの仕組みが制度化されましたが、とても複雑な法律である上に改正内容が多岐に渡っていることから、なかなか実務上のポイントが整理できないという声も少なくありません。そこで今回は、改正職安法について簡潔に論点を整理してまるわかり解説したいと思います。

(1)「特定募集情報等提供事業者」をめぐる実務対応

 「募集情報等提供事業者」とは、主に求人メディアや求人情報誌などを扱う事業者のことを指します。その中でも、「労働者になろうとする者に関する情報を収集する募集情報等提供事業者」のことを「特定募集情報等提供事業者」といい、届出が義務付けられることになりました。
 紙媒体でのみ情報提供している場合は「特定募集情報等提供事業者」には該当しませんが、会員登録を求めたり、メールアドレスを集めて配信したり、閲覧履歴に基づく情報提供をしている場合は「特定募集情報等提供事業者」に該当します。以下のフローに従って、1号~4号の特定募集情報等提供事業者に該当する場合は、「特定募集情報等提供事業者届出書」(様式8号の3)の届出が必要となります。

 4つの類型は、法令上の要件を正確に理解した上で、事業活動の実態によって判断することになるため、経験豊富な実務家でも判断が難しいケースがあるかもしれません。フローに従って自社の事業の実態を正確に把握して、法改正に対応した確実な実務を進めたいものです。

(2)新たに「職業紹介事業者」に該当するケース

 改正によって新たに「職業紹介事業者」に該当するのは、以下の3パターンです。これらの事業者は許可を取得して事業を行う必要があるため、法律上許可が必要な事業を無許可で行うと、違法行為について1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

 ①求職者に対して、求職者の希望職種やプロフィール、過去の応募・検索履歴などからみて、興味を持ちそうな関連求人をおすすめするケース

 ②ある求人情報について、求人内容や求職者の属性などから興味を持ちそうな求職者を選択して、その対象者のみにおすすめ情報を配信するケース

 ③求人情報(給与、職種、勤務地など)の条件に合致しそうな求職者を選択して、
事業者が独自のメッセージなどを付加して、求人情報を配信するケース

 広告代理店やITメディアなどを中心に新たに許可が必要となる事業が出てくることになりますが、必ずしも人間が介在した人為的な働きかけに限らず、AIなどを介して自動的に行われているケースも当てはまる点には注意が必要です。職業紹介事業に該当するか否かをめぐる論点は具体的な実務への影響が大きい内容ですので、余裕をもって確実な対応を期したいものです。

(3)求人内容の的確な表示義務について

 改正職安法では、すべての雇用仲介事業者に対して、以下の①~⑤の情報すべての的確な表示が義務付けられました。すべての雇用仲介事業者が対象となっている点では、今回の改正の中でももっとも実務的なインパクトが大きい内容だといえるでしょう。

①求人情報
②求職者情報
③求人企業に関する情報
④自社に関する情報
⑤事業の実績に関する情報

 上記の例のように、営業職中心の業務を「事務職」と記載したり、固定残業代を採用しているのに基本給に含めて記載したり、求人企業とグループ企業を混同して記載したりするのは、いずれも不適切となります。
 モデル賃金を社内で特に給与が高い労働者の給与をすべての労働者の給与であるかのように例示したり、固定残業代について基本給と固定残業代を総額で表示するような方法はもちろん認められません。
 職業紹介事業者や募集情報提供等事業者にかぎらず、個別の事案によっては行政から是正指導などが行なわれ、悪質なケースは行政処分が行われる可能性もありますので、十分な準備と対応をしていきたいものです。

○改正職安法について専門誌に寄稿

 『開業社会保険労務士専門誌SR』68号に、改正職安法について寄稿しました。

 小岩 広宣 「求人・求職者情報を扱う企業への関与 ~職業安定法~」

10月に施行された改正職安法の実務対応について、社労士や実務担当者からの目線の解説も含めて、(1)法改正の概要、(2)社労士が関与したい項目とポイント、(3)企業への提案方法について12ページに渡って記述しています。

かなり複雑なルールである「特定募集情報等提供事業者」の届出義務や、求人等に関する情報の的確な表示の実務についても図示を含めて詳しく触れていますので、関心のある方はぜひお読みください。

『SR』に「改正職業安定法の実務」について寄稿しました。