三重県の社会保険労務士法人ナデック

初回相談無料!まずはお気軽にナデックまでお電話ください。

三重県の労務問題、労使トラブル、行政対応、研修講師ならナデックへ。

059-388-3608
受付時間 10:00-18:00
HOME ナデック通信 副業・兼業と労働時間のルール
a

ナデック通信

2022年
11月号

副業・兼業と労働時間のルール

 副業や兼業が当たり前の時代になりました。かつては厚生労働省のモデル就業規則でも副業が原則禁止されていたように正社員として就職したらもっぱらその仕事に専念すべきという発想が主流でしたが、今では働き方改革の流れの中でも副業・兼業の推進が打ち出され、女性の社会進出が加速し男性稼ぎ主モデルが動揺することで性別役割意識が変化し、将来に向けた年金の仕組みの見直しや老後の生活資金問題などに悩む人が増えたことで、時代はますます本格的なダブルインカム社会への進みつつあるといえます。

本業に加えて副業・兼業を行う場合には、正確な労働時間を把握して適切な労務管理や割増賃金の支給などを行うために、所定労働時間の通算が重要となります。所定労働時間の通算は実務的にはかなり複雑で煩雑となるケースが少なくありませんが、具体的には、「原則的な労働時間管理の方法」と「簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)」の2つがあります。

①原則的な労働時間管理の方法

まずは、基本である原則的な労働時間管理の方法について考えることにします。複数の事業所で就業する労働者は、当然に週40時間、1日8時間などの労働基準法の労働時間の規制を受け、それぞれの事業所で所定労働時間があり、所定外労働が発生するため、通算のルールが明確でないと円滑に法定時間外労働を計算して、正確な割増賃金を支払うことができません。

 具体的には、労働契約の締結の順序(先後)にしたがって所定労働時間を通算し、所定外労働時間を通算することになります。(例1)では、企業Aが先に労働契約を締結しているため、A社の所定内3時間+B社の所定内3時間+A社の所定外2時間+B社の所定外1時間の順で通算し、B社の所定外1時間が法定時間外労働として割増賃金の対象となります。

 (例2)は、同じく企業Aが先に労働契約を締結しているため、時間的には後から勤務が発生しているA社の所定内から通算し、A社の所定内3時間+B社の所定内3時間+B社の所定外1時間+A社の所定外2時間の順で通算するため、結果としてA社の所定外2時間のうち、1日8時間労働の枠を超える1時間分が法定時間外労働として割増賃金の対象となります。


 
 
 

②簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)の方法

次に、「簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)」について見てみましょう。自社と副業・兼業先の双方で所定外労働が発生する場合は、労働時間の申告を受けたり、労働時間の通算管理をしたりするため、実務的な負荷が重くなります。そこで、あらかじめ以下のルールを設定することで労基法を遵守して、副業・兼業を行う場合の労働時間の管理を行うのが、「簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)」です。

① 副業・兼業の開始前に、
(A)副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(「使用者A」)の事業場における法定外労働時間
(B)時間的に後から労働契約を締結した使用者(「使用者B」)の事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)
を合計した時間数が時間外労働の上限規制である単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定する。
② 副業・兼業の開始後は、各々の使用者が①で設定した労働時間の上限の範囲内で労働させる。
③ 使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払う。

 上記のように、Aで所定外労働がない場合は、Bでの労働時間のうち、Aからカウントして法定内に収まっている時間数までは法定内となり、それを超える労働時間について法定の割増賃金が発生します。BではAでの労働時間について把握できないため、労働者からの申告を受ける必要があります。

 こちらは、A、Bそれぞれで所定外労働がある例です。あらかじめA、Bそれぞれ労基法の上限の範囲内で労働時間の上限を設定することで、事業所内での判断・裁量の範囲内で労働時間の管理が完結するため、事務処理もかなり簡便になることが期待されます。

 副業・兼業が増加する中で、労働時間の通算が求められる場面も増え、実務的に正しく処理しないと正確な給与計算などの対応ができないケースもありますが、上のようななルールは複雑なためなかなか理解しづらいこともあると思います。まずは図などを参照にして原則的な労働時間管理の方法をしっかり理解した上で、必要に応じて例外的な取り扱いにも対応できるように対応していきたいものです。