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ナデック通信

2024年
3月号

「男らしさ」「女らしさ」を超えた人事戦略とは?

最近は、ジェンダーを取り巻く話題が多くなってきました。新聞でもテレビでもネットでも、毎日のようにジェンダーをテーマとした情報が本当に多く飛び交っています。人事労務の分野でも例外ではありません。先日ある学会に参加したのですが、弁護士も医師も大企業の人事責任者も、ジェンダーの分野についてするどい関心を持ち合い、活発な議論を展開されている熱量を痛感しました。

昨年6月からLGBT理解増進法が施行され、7月には経産省職員をめぐる最高裁判決が示されるなど、ジェンダーについての法整備や社会的な動向は目まぐるしく動き、働く人を取り巻くルールや中小・零細企業の現場での対応が問われる状況の中で、さまざまな場面で実務的・具体的な取り組みが求められているといえるでしょう。このような問題意識の必要性は、いわゆるマイノリティをめぐるテーマに限定されるものではなく、社会的にはマジョリティと位置づけられる人たちについても同様かもしれません。

職場における「男らしさ」「女らしさ」をめぐる議論は、まだまだ始まったばかりだといえます。企業社会においては、服装や言葉遣い、立ち居振る舞いだけでなく、男性従業員には「男らしさ」、女性従業員には「女らしさ」が求められますが、これらは企業が社会的な存在として規律を保持するために必要とされる部分と、過剰に要求されることによってジェンダーバイアスやハラスメントの要素を醸成・補強しかねない面の両面があるといわれます。

このような問題意識から、2月26日に『ジェンダーフリーの生き方・働き方ガイドブック』(労働新聞社)を出版しました。共著者の社労士・鎌倉美智子さんが第1章「ジェンダーフリーの採用定着」、講演家の寺田智輝さんが第3章「知ることは愛のはじまり」を執筆し、私は第2章「「男らしさ」「女らしさ」を超えた人事戦略」を担当し、第4章「ジェンダーを超えた働き方が日本を変える」では3人のディスカッションを収録しています。

日本はジェンダーギャップのとても大きい国だとされます。2023年の「ジェンダーギャップ指数」は125位で、調査開始以来、最低を記録しています。「日常の悩みとジェンダーギャップの関連性調査」の結果などからも、女性の生きづらさや社会的・経済的な問題が垣間見えます。それでは日本はどこまでも男性中心の社会の中で男性たちが自由を謳歌しているかというと、決してそうではありません。

国連の「ジェンダー不平等指数」では日本は米国や英国よりも上位の24位に位置づけられ、OECDの「幸福度白書」では世界で唯一、男性の方が女性よりもネガティブな感情バランスを感じることが多い国だという結果が出ています。ジェンダーギャップの中で全体として女性が生きづらいという構図の中に置かれつつ、同時に男性よりも女性の方が相対的に幸福度が高いというパラドックスが今の日本の現状だといえるのです。

このような視点から、私が執筆した第3章「「「男らしさ」「女らしさ」を超えた人事戦略」では、では、重要な経営テーマしてのハラスメント対策、男性固有の労務問題の具体例と対応、男性の働き方と「役割意識」の歴史、ダブルインカムを後押しする取り組み、ドレスコードの変革と多様性、ジェンダー視点からのハラスメント対策、「マジョリティの中のマイノリティ」に光を当てる人事施策などのテーマについて触れています。

『ジェンダーフリーの生き方・働き方ガイドブック』の全体の目次を以下にご紹介します。

第1章 ジェンダーフリーの採用定着

01 ジェンダーフリーとジェンダー・ギャップ

え…ジェンダー本を執筆?
世界最下位レベルのジェンダー・ギャップ指数
ここまで違う平均給与:男性vs女性
ジェンダーフリーな生き方って、魂が〇む生き方だ

02 マイノリティの採用が企業を活性化する

「LGBTQ」なんて分類すらなくなるといい
日本人は、LGBTQをどう見ているのか?

03 人口減少時代の採用とジェンダー

深刻な人口減少時代
ガラガラガッシャンと根本的に価値観と仕組みを
変えられたなら~不真面目が日本を救う~
未来予測
採用市況の過去・現在・未来
円安が採用市況に与える影響と採用戦略
採用難時代の採用成功法則
最後の切り札「本気の教育」

04 採用定着にうまくいく会社・いかない会社

「男女間賃金格差に係る情報開示の義務付け」が採用定着に与えるインパクト
LGBTQもその他も求人は、「キーワード」で勝負!
採用難時代に誰もが働きやすい会社をつくるには
LGBTQ当事者の困りごと
採用定着がうまくいく会社~100年企業の目指す世界~
最後に

第2章 「男らしさ」「女らしさ」を超えた人事戦略

01 いま中小企業の労務管理の現場で起こっていること

採用難と権利意識の高まりが労使関係を変えた
「Z世代は理解できない」では済まされない
コロナ禍が場所、時間、ジェンダーのあり方を変えた
ハラスメント対策が重要な経営テーマになる
LGBT理解推進法について
トランスジェンダーのトイレ使用をめぐる最高裁判決

02 ジェンダーギャップの中での“男の生きづらさ”

ジェンダーギャップ後進国日本の女性の苦悩
女性活躍推進の中で取り残される女性と男性
男性学の視点からみた“男の生きづらさ”
実録・男性固有の問題が労務問題に発展する
男性の育児休業と「役割意識」の歴史

03 「男らしさ」「女らしさ」のアップデートが必要な時代

明治~戦後に培われた男女役割が終焉した
社会保障・税の仕組みが勤労意欲を削ぐ時代
「年収の壁」問題について
ダブルインカムを後押しする企業が活性化する
「男らしさ」「女らしさ」を排除した子育てが働き方を変える

04 ジェンダーフリーへの取り組みが明るい未来を引き寄せる

ドレスコードの変革が多様性を実現する
ジェンダーフリーの服装で出社する社員への対応
ジェンダー視点からのハラスメント対策の事例
「マジョリティの中のマイノリティ」に光を当てる人事施策
マイノリティの活躍が多様性への架け橋になる

第3章 知ることは愛のはじまり

01 私の願い「自分らしく生きたい」

アレがない!ち○
あだ名は『おとこおんな』と呼ばれた小学生時代
孤独な悩みを抱える日々
なりたくなかった「女子校生」の葛藤
勇気の告白・孤独から解き放たれる
先生の言葉で心が崩壊する
明日が来ることへの恐怖に襲われる

02 愛によって見えたもの「生きていていいんだ…」

家族の愛を知って、愛の温もりを感じた日
カラダとココロの痛みと喜び
全ての過去が輝きに変わる
消したいトラウマを克服する
1ミリも思い描かなかった夢にも思わない人生

03 生きる喜び「今幸せですか?」

多様性の本質、一人ひとりの個性が紡ぐ社会
自分らしく堂々と生きていい
知っているあなたの存在が救いになる
カミングアウトの背後にある勇気と苦悩

04 笑顔が生まれる優しい社会

「個性が輝き、職場が輝く」
多様な視点、一つの世界
アンコンシャスバイアス、誰もが持っている無意識の思い込み
笑顔と幸せをもたらす、人生の本質
みんな違ってそれ“が”いい
愛と共感が広がり、社会に優しい風を

第4章 ジェンダーを超えた働き方が日本を変える ~著者3人のディスカッション~

3人の自己紹介と各章のポイント
みっちゃん(鎌倉美智子)への質問
ひろりん(小岩広宣)への質問
ともき(寺田智輝)への質問
3人のフリーディスカッション

人事労務の分野で「ジェンダー」というと、もっぱらマイノリティのテーマを想起される人が多いと思います。もちろん、それらもとても大切な課題に違いありませんし、本書もさまざまな視点から触れていますが、同時にそもそも「ジェンダー」とはもっと広い範囲のテーマだということを知ってほしいという思い、そうした視点こそが、マイノリティの課題と向き合う上でも有益だという思いから、今回は3人で共著をさせていただきました。

企業の人事や労務の観点から、「男らしさ」「女らしさ」は重要なファクターでありつつ、取り扱いを間違うとかえって深刻なトラブルや実務上の不合理を招きかねないという感覚に興味を持たれた人は、ぜひ一度目を通していただきたいです。少し視点が異なる2人の共著者の章もみどころがありますので、きっと何かのお役に立てるのではないかと思います。

『ジェンダーフリーの生き方・働き方ガイドブック』(労働新聞社)を出版しました。