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ナデック通信

2024年
2月号

能登半島地震に関する労務対応をめぐって

1月1日に発生した能登半島地震は、北陸地方を中心にかつてないような大きな人的・物的被害をもたらしました。あらためて今回の震災で亡くなられた方々に心よりご冥福を申し上げ、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

(1)地震被災に対応する基本的な情報の整理

今回の地震被災に関する労務分野の行政対応としては、さまざまな通達や行政からの情報が公開されていますが、基本的な事項を以下にまとめます。

・被災にともなって保険証を紛失などした場合であっても、医療機関の窓口で、氏名、生年月日、勤務先の事業所名を申し出ることで、保険証がなくても受診できる
・被災により診療録などを滅失、棄損した場合の労災診療費などについては、簡略な手続きによる特例請求書による特例請求が認められる
・賃金が未払いのまま退職を余儀なくされるなどした労働者に対して、未払い賃金の立替払事業が実施される
・住宅、家財などの財産が2分の1以上の損害を受けたときは、申請に基づいて国民年金保険料が免除となる
・財産に相当の損害を受けて納付すべき社会保険料の納付が困難となった場合は、事業主の申請に基づいて、保険料の納付猶予を受けることができる場合がある
・被災した事業主からの申請に基づいて、労働保険料の納付猶予措置等を受けることができる場合がある
・所得があるために年金の一部または全部が支給停止されている人が、被災によって住宅、家財その他の財産が2分の1以上の損害を受けたときは、申請に基づいて一定期間の支給停止を行わない
・天災事変などの不可抗力の場合は使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務は発生しないが、①その原因が事業の外部より発生した事故、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故の2つの要件を満たす必要がある
・災害による施設の被害は「経済上の理由」とはならず雇用調整助成金の支給対象とはならないが、災害や復旧の長期化などの場合に、交通手段の途絶などにより原材料の入手や製品の出荷が困難となり、事業所が損壊し修理業者の手配や修理部品の調達が困難となったことなどにより、事業活動の縮小が行われた場合は、「経済上の理由」に該当し助成金の対象となる可能性がある

(2)雇用調整助成金の特例措置

能登半島地震に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して、雇用調整助成金の特例措置が講じられます。具体的な概要は、以下の通りです。

地震に伴う「経済上の理由」とは、地震による直接的な被害そのものではなく、災害に伴う経営環境の悪化によって、事業活動が縮小して休業などを行った場合が該当し、助成金の対象となります。上記の要件緩和が行われ、特例措置により休業実施後の事後提出も可能となり、この場合は締結日から遡及して発効させる必要があります。

(3)時間外・休日労働に関するQ&A

時間外・休日労働に関しては、「令和6年能登半島地震に関するQ&A(労働基準法第33条第1項関係)」が公開されています。災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合には、労働基準監督署長の許可を受けることで、36協定を締結することなく時間外・休日労働が認められていますが、今回の能登半島地震に際して想定されるケースについて、以下の7例が示されています。

①復旧に先立って、能登半島地震の被害状況を詳しく調査するための測量や復旧に向けた設計 対象となる
②復旧のため、倒壊した建物の解体作業や、道路上から瓦礫を撤去する作業、損壊した建物の修繕工事 対象となる
③自治体等からの要請を受けて被災地内での災害復旧工事の応援 対象となる
④被災地外のトラック運送事業者が、国や自治体等からの要請を受けて避難所避難者のための支援物資を被災地まで直接届ける 対象となる
⑤トラック運送事業者が、能登半島地震の影響で渋滞が多く、迂回路を通らざるをえなくなり、平時よりも輸送に時間がかかってしまう(被災地への支援物資の輸送ではなく、あくまでも通常業務) 対象とならない
⑥被災地内の医療機関が、能登半島地震で負傷者などの救護等に当たっており、平時をはるかに上回る数の搬送などがある 対象となる
⑦被災地外に所在する医療機関が、被災地内の医療機関では受け入れきれない負傷者を、自治体や被災地内の医療機関等からの要請により受け入れている 対象となる

「対象となる」「対象とならない」はあくまで一般的な考え方として示されており、具体的には個別の状況や事情によって判断されることになりますが、行政の考え方や解釈が公開されたことの意味は大きいといえるでしょう。実務上の判断が求められる場面において、今後の指針として参考にしたいものです。

(4)自然災害時の事業運営に関するQ&A

「自然災害時の事業運営に置いて労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A」が、厚生労働省から公開・更新されています。能登半島地震の発生によって多くの事業所が甚大な被害を受け、労働者に対して使用者が守らなければならない法律上の事項などについて、行政としての一般的な考え方がQ&Aとしてまとめられています。

Q3-7 新卒内定者の内定を取り消したり、入社してすぐに休ませてもいいでしょうか。
Q10-1 従業員が仕事中に地震に遭遇して、ケガをしたのですが、労災保険は適用されますか。また、地震に遭遇したのが出張用務中、休憩時間中、外回りの営業の最中であった場合も、労災保険は適用されますか。
Q10-2 地震により事業場や医療機関が被害を受けた等の事情によって、従業員が労災保険給付請求書における事業主の証明や医療機関の証明を受けるのが困難な場合はどうしたらよいでしょうか。

Q11-3 災害復旧工事における労働災害防止のために特に留意すべき事項を教えてほしい。

上記は1月15日に追加された点ですが、いずれも労働法の基本的な考え方が分かりやすく整理されていますので、ぜひ一度は目を通しておきたいところです。