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ナデック通信

2024年
1月号

2024年の労働・社会保険法改正のゆくえと対応は?

新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。約3年のコロナ禍がひと段落して最初の新年を迎えた2024年は、歯止めがきかない少子高齢化や、さらに進化を増す生成AIなどのテクノロジー、Z世代に象徴的にみられる価値観の多元化、多様性を志向するダイバシティ経営への動きなどが加速しつつ、次の時代に向けて確かに歩みだす一年になるのではないかと思います。今年も多様な働き方やジェンダーをめぐる雇用管理などの分野に精力的に取り組みつつ、労働・社会保険の専門家として中小企業の現場に寄り添う社労士法人としてさらに精進していきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

現段階で確定している2024年の主な改正点は、以下の通りです。この中でも特に労務管理の現場での影響が大きいのは、あらゆる事業所での労働条件明示書の見直しが必須となる労働条件明示をめぐる労基法改正、特例がなくなり全業種に改正労基法の原則が適用されることで「2024年問題」の発生が心配される時間外労働の上限適用(建設事業、自動車運転の業務、医師)、さらに適用範囲が拡がり人事管理にとどまらず経営全般への影響が懸念される10月からの社会保険加入対象企業の拡大です。

 

2024年1月~ 電子帳簿保存法が本格スタート
4月~ 労働条件明示のルール改正
すべての業種で時間外労働の上限適用(建設事業、自動車運転の業務、医師)
裁量労働制(みなし労働時間)制度の見直し(以上、労基法関係)
障害者雇用率の変更(障害者雇用促進法)
10月~ 社会保険加入対象企業の拡大(健康保険法・厚生年金保険法)
秋~ フリーランス保護法の施行
12月~ マイナンバーカードと保険証が一体化

(1)電子帳簿保存法の本格スタート

改正電子帳簿保存法は2022年1月から施行されていますが、電子取引データ保存義務に関しては2年間の措置期間が設けられていますので、2024年1月から本格スタートすることになります。電子帳簿保存法の保存ルールには、電子帳簿保存、スキャナ保存、電子取引の3つがありますが、義務化されるのは「電子取引」です。領収書や請求書など、お金の動きについてデータでやり取りしたものはデータ保存することが義務となりますが、ペーパーレスである電子データは紙(実物)が存在しないので保管漏れが起こりやすいため、企業や部署ごとに一定のルールをつくるなどして万全を期していきたいものです。

(2)労働条件明示のルール改正

労働条件通知書をめぐる労基法関連の改正によって、新たに採用する労働者に対して労働条件明示書を新様式に変更した上で交付する必要があるほか、契約社員などの有期雇用労働者に対して、更新上限や無期転換の条件についての情報を明示することが義務づけられます。今後は就業場所や業務内容を限定する「限定正社員」として働きたいと考える人が増える可能性もあり、場合によっては限定正社員制度の創設や運用の見直しなどを検討したり、就業場所や業務内容の変更範囲などについて従来以上にきめ細かく説明・共有をしていくことが必要でしょう。

(3)すべての業種で時間外労働の上限適用

建設事業、自動車運転の業務、医師については、「働き方改革」による労基法改正で36協定による上限規制が改正施行されて後も5年間の猶予期間が設けられていましたが、2024年4月からはこれらの業種、業務についても原則の上限規制(それぞれ上限時間の詳細ルールは異なる)が適用されます。俗にいう「2024年問題」の深刻化が予測されますが、人手不足や物価高騰、燃料費引き上げなどに拍車がかかる中で、上限規制の適用がさらなる人手不足や人件費上昇などにつながることで、これらの業種で働く人だけでなく広く社会全体にも大きな影響が出ることが懸念されています。

(4)社会保険加入対象企業の拡大

パート・アルバイトの社会保険の加入適用は、2022年10月から被保険者数101~500人規模に適用されていますが、2024年10月からは51~100人の中小企業に引き下げられます。現在は月収約10万8千円まで扶養の範囲内ですが、2024年10月からは8万8千円以上で被保険者となるため、パート・アルバイトの働き方や企業の法定福利費などに大きな影響があります。新たに社会保険の対象となる人に向けては、必要に応じて個別面談や説明会などを実施したり、雇用契約や勤務条件の見直しなどを相談するなどの対応が求められるでしょう。

(5)フリーランス保護法の施行

フリーランス保護法は、フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化やフリーランスの就業環境の整備を図ることを目的に制定され、2024年の秋までに施行されることになっています。発注事業者とフリーランスの間の「業務委託」に係る事業者間取引を対象とし、フリーランス(業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの)と発注事業者(フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの)が適用対象となります。具体的には、書面等による取引条件の明示や報酬支払期日の設定・期日内の支払、募集情報の的確表示などが課されることになり、違反行為を受けた事業者が行政に申告することにより、報告徴収・立入検査、指導・助言、勧告などが実施されることがあります。

(6)マイナンバーカードと保険証の一体化

2024年12月には現在の健康保険証が廃止され、新たな保険証の発行が停止されることで、順次「マイナ保険証」への移行がはかられます。健康保険証の廃止後も1年間程度は、現行の保険証の使用が認められる見通しで、「マイナ保険証」に切り替えない人に対しては、健康保険証の代わりとなる資格確認書(有効期間5年)を発行するなどの対応を行い、「マイナ保険証」への併用期間が設けられる予定です。現在の健康保険者証の廃止に反対する声もあり、代理申請に対応できないなどの事情から高齢者向けの医療が混乱するなどの懸念もありますが、「マイナ保険証」への円滑な移行について事業者や担当者も適切な知識に基づく対応をはかっていきたいものです。

 

2024年は、加速する少子高齢化にともなう社会保障制度の見直しの議論や、健康保険証のマイナンバー統合、賃金のデジタル払い、生成AIのさらなる進化などの潮流、いわゆるZ世代のカルチャーやハラスメントをめぐる社会的な価値観の多元化、ジェンダーや国籍やキャリアなどを超えて多様な働き方を志向するダイバシティ経営への動きが加速しつつ、混迷する政治や物価高騰、人手不足が直撃する経済の動向もあいまって、これからの日本の帰路に立つ一年になるかもしれません。まずは着実に目の前の課題に向き合いながら、明るい未来への展望を胸に邁進する年にしていきたいものです。