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ナデック通信

2023年
9月号

「Z世代」の労務管理への対応について

最近、「Z世代」という言い方をよく耳にすると思います。そしてビジネスの現場などでは、どちらかというとネガティブな意味で使われることが多いですね。Z世代とは、概ね90年代終わりから10年代序盤まで生まれの人たちのことをいいます。ただ、慣用句としてはもう少し範囲を広げてざっくりと若者世代という意味で使われることもあります。

社労士として毎日のように企業現場の労務管理に携わっていると、Z世代を中心とする若者への対応で頭を抱える経営者や管理職が多いです。単に案件が多いというだけでなく、日に日にそうした状況がエスカレートしており、深刻な労使トラブルに発展するケースが増えていることを肌感覚で感じます。振り返ってみれば、いつの時代にも「若者は分からない」といわれてきて久しいとは思いますが、とはいえ最近のZ世代と昭和生まれとの間の感覚や発想をめぐる溝は果てしなく大きく、以前のようなまだ愛嬌の余地があったすれ違いとは異次元に差し掛かっている感があります。

(1)「Z世代」に共通する特徴とは?

Z世代の人たちには、どんな共通項があるのでしょうか?

・周りと仲良くでき、協調性がある
・一見、さわやかで若者らしさがある
・職場では横並びが基本
・言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
・人の意見はよく聞くけど、自分の意見は言わない
・悪い報告はギリギリまでしない
・質問しない
・タテのつながりを怖がり、ヨコの空気を大事にする
・会議では後方で気配を消し、集団と化す
・一番嫌いな役割はリーダー
・自己肯定感が低い
・競争が嫌い
・特にやりたいことはない

これらを見て、「やっぱり」とか「実感がある」と思った人も少なくないのではないでしょうか。上記は、昨年話題になった金間大介著『いい子症候群の若者たち―先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(東洋経済新報社)で、著者が指摘するZ世代の行動原理の一部です。本書は主にいまどきの学生などの若者心理を深く読み解いたことでメディアなどでも取り上げられましたが、若者世代の部下とのコミュニケーションに悪戦苦闘している上司の目線からもとても参考になる一冊ですので、ぜひ参考にしたいものです。

(2)みんなの前で褒めてはいけない?!

若手社員を褒めたらまったく無反応で困ってしまったとか、それどころか「自分だけを褒めないでください」と逆ギレされてしまったという話もしばしば聞きます。朝礼で褒めてもらえるなんて最高の一日で、たとえ言葉だけでも上司からねぎらってもらえたらエネルギーが湧いてくるという昭和世代の“常識”は、もうまったく通用しない時代になってしまっているのです。

著者の研究によると、社長賞などの社内表彰制度は全体としてモチベーションアップにつながらないだけでなく、受賞した社員でさえ違和感を抱き、それどころか無理に競争させられて「自分だけが利益を得た」ことに嫌悪感すら持つといいます。彼らにとっては均等分配が快適な生存環境であり、こよなく愛するマンガやアニメのキャラも「いい人」なのです。

褒めてはいけない、表彰してはいけないとなると、いったいどうしたらいいのかと首をかしげたくなりますが、「みんなの前で」「自分だけが」というのが、彼らの論理によるキーワードになります。だから、逆にいえば、「仕組みとして」「全員が」会社から評価されることはむしろ大いに歓迎ということになりますので、ぜひ、その方向でプラス評価を下せる方法を駆使していきたいものです。

(3)「究極のしてもらい上手」

圧巻は、若者は「究極のしてもらい上手」だという著者の理論。最近の若者をみていて、何をいってもほとんど反応がなくて、優秀なはずなのに最低限の仕事しかせずに、まるで人と人とのコミュニレーションが成立せず、あたかも暖簾に腕押しみたい、という印象を持つことも多いと思います。にも関わらず、昔のように世の中が彼らを責めるような風潮もあまり見受けられず、それどころかむしろ彼らにものを言っている側がペースを奪われているような・・・

上司が部下に一生懸命に丁寧に指導したり教育しても、いっこうに自ら動く気配が感じられないどころか、むしろ主導権が逆転して上司の方が操られているといった光景が、今やいたるところで見られているのが、リアルな現実なのです。そして、そのうち根負けしてしまって、上司や先輩の方が彼らに折れてしまい、あくせく彼らのためにあれもこれも対応する羽目になってしまうのです。

そう、「素直でまじめないい子オーラを出す以外何もしない」という彼らの無言の戦略はきわめて強力なので、いい子症候群の若者たちを前に、大人はあまりにも無力で「してあげたい欲求」という自己効力感を抑えることができず、その結果、「究極のしてもらい上手」が次々と生まれます。この流れに対抗するには、まともな大人の自己効力感(≒今までのビジネス世界の常識)をいったん棚上げして気配を消すくらいしか手立ては見つからなさそうです。

(4)Z世代の人たちとしっかり向き合うには?

では、どうしたらこんなZ世代のテーマと向き合うことができるのでしょうか。今までの常識に支配された感覚でとらえたのでは、容易には答えは見つからなさそうです。著者は、かなり辛辣に、「仕事に普通なんてない」という真実を説いています。決して若者に説教するような口ぶりではなく、かといって冷徹に突き放すかのようなバランス感覚には、やはり長年に渡って若者と真剣に向き合ってこられたリアルな智慧を感じます。

目立たず静かに毎日平穏に過ごすことが「普通」だとするなら、その状況は今の日本で得られる最上級の待遇なのです。実際には宝くじ当選級の運の良さか涙ぐましい努力の継続がなければ、仕事中にめったに「普通」の時間などなく、安定を保つことなど難しい。この真実をいかに嫌味や愚痴を交えずに彼ら彼女たちと共有するかという視点が、いま私たちにもっとも求められているのかもしれません。日々の仕事の中でZ世代の人たちと向き合う上での構えとして、参考にしていきたいものです。