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ナデック通信

2023年
4月号

令和5年春の法改正にどう対応するのか?

全国各地に桜が咲き乱れて、令和5年もいよいよ春本番を迎えました。ピンクに染まった桜から初夏の風に吹かれる新緑の時期が、一年の中でももっとも清々しく前向きな気持ちになれる季節。日々の時間を大切に過ごしていきたいですね。毎年新年度の4月からはさまざまな労働法や社会保険関係の法改正がありますが、今年も同時に実務への影響が大きい改正が続いていきます。特に大きなポイントとしては、60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ(中小企業)、男性労働者の育児休業取得状況の公表の義務化、雇用保険料率の変更が挙げられます。主な改正点をまとめると以下のとおりです。

 

出産育児一時金の支給額の引上げ

→42万円から50万円に引き上げ

オンライン資格確認の原則義務化

→保険医療機関・薬局にオンライン資格確認の導入が原則義務化

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ(中小企業)

→中小企業の月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を25%から50%に引き上げ

賃金のデジタル払い制度の開始

→厚生労働大臣が指定する資金移動業者の口座への賃金支払を認める

男性労働者の育児休業取得状況の公表の義務化

→従業員1,000人を超の事業主に男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表義務化

雇用保険料率の変更

→失業等給付に係る雇用保険料率を8/1,000とする

労災保険の介護(補償)等給付額の改定

→介護(補償)等給付の額について、介護を要する程度の区分に応じて改定

国民年金保険料の改定

→令和5年度の保険料額は16,520円

年金額の改定

→67歳以下(新規裁定者)は令和4年度から2.2%の引上げ、68歳以上(既裁定者)1.9%の引上げ

 

出産育児一時金については、従来は「40.8万円+加算額1.2万円=総額42万円」だったものが、令和5年4月から「48.8万円+加算額1.2万円=総額50万円」に引き上げられました。出産育児一時金は医療機関等に直接支払う直接支払制度がありますが、医療機関等に直接出産育児一時金が支払われることを希望しない場合は、出産後に被保険者が申請して出産育児一時金の支給を受けることもできます。出産育児一時金の被保険者が請求手続きを行うため、支給額が変更されたことにともなう実務への影響は最小限だといえるでしょう。

オンライン資格確認等システムの導入により、オンラインで資格を確認することにより、医療機関・薬局の窓口で、直ちに資格確認ができ、保険診療を受けることができる
患者かどうかを即時に確認することが可能となります。窓口の入力の手間も減るほか、常時オンラインで接続されるため、支払基金・国保中央会の情報を医療機関・薬局に提供することができ、マイナンバーカードを用いて診療・薬剤情報や特定健診等情報を医療機関・薬局で閲覧することが可能となります。全国各地の医療機関・薬局で3月末に向けたシステムの導入準備に追われ、なかには夜を徹して設定や環境整備を行う例も見られましたが、画一的なルールでマイナンバーに対応できるようになることで、今後の業務効率が格段に向上することが期待されます。

 

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ(中小企業)については、平成22年から大企業に適用されていた月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用され、4月1日から労働させた時間について引き上げの対象となります。具体的な実務としては、1か月の起算日からの時間外労働時間数を累計して 60 時間を超えた時点から50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないことから、就業規則や賃金規程の変更が必要となるほか、カレンダーや出退勤のシステムなどによって法定休日労働と月60時間を超える時間外労働とを明確にした集計管理が必要となります。

賃金のデジタル払い制度は、労基法24条の通貨払いの原則についての例外であり、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む実態に対応するため、一定の要件を満たした場合に資金移動業者の口座への賃金支払(スマートフォンの決済アプリなどへの振込など)を可能とすることとされました。実務的には、デジタル払いを適用する場合は、銀行口座などへの給与支払の選択も可能とした上で、労働者に対して給与のデジタル払いについての説明と同意が求められることになるため、十分に注意しなければなりませんが、一定の要件を満たす資金移動業者が厚生労働大臣の指定を受けるには数か月の審査期間を要するとされているため、給与支払いなどの具体的な実務対応への影響は少し先になることになります。

 

男性労働者の育児休業取得状況の公表の義務化については、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業について、公表を行う事業年度の直前の事業年度における①育児休業等の取得割合、②育児休業等と育児目的休暇の取得割合のいずれかをインターネットなどで公表することになります。①が原則的な取得割合となりますが、②は①に小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数の合計数を加えた算式による割合となります。公表は、事業年度の直前の事業年度の状況について、事業年度終了後おおむね3か月以内に行う必要があることから、たとえば3月決算(事業年度末)の事業所の場合は、6月末までに公表することになります。

雇用保険料率の変更については、令和5年4月1日から令和6年3月31日の保険料が引き上げとなり、一般の事業の場合、労働者負担は5/1,000から6/1,000へ、事業主負担は8.5/1,000から9.5/1,000へ、合計は13.5/1,000から15.5/1,000へと変更されます。事業主負担のうち、失業等給付・育児休業給付の保険料率は1/1,000引き上げられますが、雇用保険二事業の保険料率は3.5/1,000のまま据え置きとなります。昨年は10月から保険料引き上げとなったことから、労働保険の年度更新の手続きにあたっての集計作業が煩雑となりましたが、今年は4月からの引き上げとなりますので、実務的にはスムーズに対応できると思います。4月からは社会保険の協会けんぽの保険料が変更となる地域もありますので、給与計算などの対応には十分に注意したいものです。