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ナデック通信

2023年
3月号

AIの進化で働き方はどう変わるのか?

今どこに行ってもかなり話題になっているアイテムがあります。「aiチャットgpt」。もうすでにそのすごさに脱帽したり、今後の可能性を確信している人も多いと思います。アメリカのOpenAI社が2022年に公開した人工知能(AI)ですが、人間が入力した質問に瞬時に答えて自然な言葉で回答文章が生成されることで注目されています。

史上最速でユーザー数が1億人を突破したとされますが、何がすごいのかは実際に触れてみるとすぐに実感します。数分間で簡単にユーザー登録して、日本語でとりとめのないキーワードを入力すると、わずか数秒で明快な回答が返っています。ほとんど文章になっていないようなキーワードを質問欄に入力するだけで、AIが真面目に自然な文体によって即答してくれるだけでなく、的確な視点からの論点のまとめ方も本当にすごいので、まさに脱帽するしかありません。

実際に社労士らしい切り口で、しかも単純な“知識問題”ではない質問を入力してみました。「人を育てる会社にとって大切なことは?」。なかなか人間が考えても瞬時に正鵠を得た回答をするのは難しいテーマだと思います。その結果が以下の文章です。まだ日本で使えるようになってまもないレベルでこれだけのクオリティの回答ですから、数年後にはさまざまなビジネスシーンやアカデミックな議論でも、「参考までAIの意見を聞こう」というのが、当たり前の時代になると思います。

 

 

続いて、ちょっと意地悪な質問をしてみました。「100年企業の共通項とは?」。「100年企業」とは、創業以来100年を超えるいわゆる“老舗企業”“長寿企業”であり、日本には約3万社弱あり、上場会社3600社のうち560社あまりが100年企業だとされます。まず「100年企業」という言葉をどう認識して定義するのか?そして企業が「100年企業」を目指す上での“共通項”をAIがどう考えるのか?とても興味がありますね。こちらの回答もとても的確で、むしろ人間が一生懸命に取り組んだ方が比較にならないほど時間がかかると思います。

 

 

今の「aiチャットgpt」は英語版しかなく、日本語を入力した場合は英語のシステムで導かれた回答が日本語で表示されます。英語の頭脳で考えて日本語に同時通訳しているようなものですが、それにしてはシンプルに“文章がうまい”と感じます。今はGoogleなどの英文和訳もかなり発達していますから、即座に日本語表示が出されること自体は何の不思議もありませんが、日本語ネイティブが厳しめの目線で読解しても、ほとんど根本的な語法の誤りは見つからないくらいのレベルだと感じます。

“文章を書く”という能力は、従来AIがとても苦手でなかなか人間には及ばないとされてきましたが、これだけ高度な解析力で経験知を瞬時に正しい文章に落とし込むことができることで(しかも英語を日本語に)、これからはそれなりにうまい文章が書けるとか、横文字(外国語)を縦文字(日本語)に変換(翻訳)できるというだけでは、まったく人間独自の“知的労働”とはいえない時代がくることを示唆していると思います。

それではこれだけAIが急速に進化する時代の中で、私たちの働き方はどのように変化していくのでしょうか?ざっくりと、これからの時代を予測してみます。

 

(1)答えが決まっている“定型業務”は、確実にAIによって代替されていくことになる。

→会計記帳、給与計算、社会保険、資料作成、データ入力、ファイリングなどは、ローカルルールや特殊な取り扱いも含めて、ほとんどの分野でAIが応用力を発揮して代替し得る可能性が高いです。税務申告、許認可、登記、商標などもすべてではないにせよ能力的には人間を脅かすことは間違いないです。国家資格による業務独占という発想が根底から問われる時代がきても不思議ではないかもしれません。そして、働くことは食べるための糧を手にする方法と割り切って、時給(換算)を“我慢料”だととらえて、自分の意思や感性を押し殺して毎日定型業務をこなすような働き方は、そもそも“労苦”という感情を持たず有給休暇も発生しないAIには太刀打ちできない構図になっていくのではないでしょうか。

(2)調和と安定が尊ばれてきた職場文化が変容を遂げ、“個性”が求められる時代になる。

→伝統的に和を重んじてきた日本社会では、従来、相互扶助を志向する集団規律が尊ばれる風土が強く、周囲と調和しにくい個性や前例を踏襲しない手法は排除されがちでした。AIの能力が画期的に高まり守備範囲が飛躍的に広がることで、このような伝統的な構図が変容する可能性が高いです。“感情労働”によってこそ人間固有のパフォーマンスが発揮できるという状況になると、今までは毛嫌いされた突出した“個性”こそが期待され、対人間ではなく、対AIにおける“個性”が根本的に問われる時代が訪れることになるでしょう。労働環境に訪れる変化としては、ありのままの特徴や価値観において際立った個性を持っている人の活躍が促されることで、行き過ぎた先例主義や没個性になりがちな年功主義的な社風に彩りを与えて新風を迎える十分な契機になっていくのではないかと思います。

(3)職場における男性と女性をめぐる性別役割規範の位置づけが確実に変わっていく。

→昭和型の役割規範では、男性と女性とはまったく相容れない存在であって、社会的に果たすべき役割もまったく異なると認識され、典型的な夫=仕事、妻=家庭という構図を前提とする税や社会保障制度などが社会的にも後押ししてきました。AIの高度化によって生産活動や経済活動が急速に合理化・効率化の方向に向かうと、このような従来の役割規範は大きく変容することが予想されます。男性が仕事向き、女性が家庭向きという属性別の志向・分類はあまり意味をなさなくなり、人間対AIの構図の中で性差を超えて人間コミュニティがいかに連携し、AIによって構図が一変する合理化・効率化の流れの中で独自の意味を生み出していくかが問われる時代が近づくと思います。私たちがAIと対峙することで、従来の性別役割規範では日の目を浴びなかったマイノリティ性の可能性を開花させることを自覚せざる得なくなり、いまだ触れたことがなかった感じ方・考え方・働き方の芽を見出して育てていくスキルを磨くことで、くしくもAIでは決してなしえない世界を導くことにつながっていくのかもしれません。