「就業規則とは、企業において使用者が労働基準法等に基づき、当該企業における労働条件等に関する具体的細目について定めた規則集のことをいう」(ウィキペディアより)
上記のように就業規則とはその企業のルールブックにあたるものとなります。企業にとってのルールを定めたものなのですから、当然必要なものとなります。しかし、色々な場所で話を聞いてみますと、
「そもそも必要なの?」
「法律で決められているから一応作成したけど・・・」
など、就業規則に対して前向きな発言はあまり聞こえてきません。
さらに労働者の方々に話を聞いてみますと、就業規則を知らない方も多数存在します。
労働基準法第89条(作成及び届出の義務)では、
「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする(以下略)」
と記載されています。つまり多くの企業には就業規則が存在していることになります。そして行政官庁への届出と従業員への周知があって初めて効力を発揮します。そうしますと就業規則の存在を知らない方が一定数を超えて存在していることはおかしな状況なのです。
では、なぜこのような状況が生まれるのでしょうか。
もっとも大きな理由は、トラブルが実際に起きていないから。または、それが表面化してこなかった、うまく解決できてきていたなどが考えられます。実際、就業規則を示して、この条のこの内容に抵触しているのでこうなりますなどと説明をしたりされたりしたことがあるかと問われれば、「ない」と答える方が圧倒的に多いでしょう。
また、日本的な発想でいけば、礼儀やマナー、慣習といったことが時にそういった規則を超えるような影響力をもつこともあります。普通は、常識的に、言えないこと、言わないこと、触れないこと、空気を読むことが美徳とされ、周りに迷惑をかけないようにする。日本においては、なくても困らないが就業規則の現状だと思います。
しかし、就業規則は法律上の義務ですので作成しなくてはなりません。そうなりますと、一応作成し、そのまま放置、従業員は知らないとなっていきます。
性善説にたって考えればそれでもよいのかもしれません。人と人が譲り合い、認め合い、尊重しあい、トラブルなど無用の世界。そんな世の中がくれば私たちの仕事はほとんどなくなってしまいますが(笑)。現実はそうではないことをみなさんよくご存じかと思います。
そういったことからも、「就業規則というものの中身」というより「就業規則そのもの」に対する考えを今一度見直していただく必要があると考えます。
まず、ひとつには規定がなければ懲戒などの処分をすることができないということ。なにかことが起きてから慌てて規定したとしても遡及して適用することはできません。
ふたつめは、抑止力になるということ。きちんと規定、周知がなされることによって様々なトラブルを未然に防ぐ可能性が高まります。
そしてみっつめは、労使双方にとってのものということです。これは多くの人が勘違いしがちですが、就業規則はどちらか一方を縛るためのものではありません。労使双方が仕事をしていくうえで必要なことを規定するものとなります。
これらのことを考えれば、
「そもそも必要なの?」
→はい、必要です。法律上だけでなく、企業運営の面からみても必要です。
「法律で決められているから一応作成したけど・・・」
→先ほど述べた通り、一応作ったでは効果が期待できず意味を成さない可能性があります。
企業の就業規則に対しての意識が薄ければ、当然その企業の従業員の就業規則に対する意識はもっと薄くなります。まずは企業が率先して意識を持つことで従業員の意識を変えることにも繋がると思います。
決して日本人が持っている性質が悪いという話ではありません。世界では、ワールドスタンダードでは、などと言われると、ここは日本ですけど、と思ってしまいます。しかし、世の中は変わります。考え方もなにもかも。変わらないことがよいこともあります。
いいものを残しつつ、変えなければならない所はしっかりと変える。先ほども言いましたが、それは企業が率先してやるべきことだと考えます。
是非この機会に就業規則というものについて改めて考えてみてはいかがでしょうか。