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ナデック通信

2020年
11月号

10月の最高裁と令和3年「一般賃金」の派遣業への影響は?

(1)最高裁判決について

10月は最高裁の判決ラッシュでした。いずれも非正規雇用の待遇について争われた裁判です。
翌朝の新聞トップはこの話題づくめでしたから、注目度もとても高かったですね。
10月14日が大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件、15日が日本郵便事件(3事件)の判決でした。
大阪医科薬科大学事件は賞与、メトロコマース事件は退職金、日本郵便事件は諸手当と休暇制度が主な争点でした。
大阪医科薬科大学とメトロコマース事件は使用者側の勝訴、日本郵便事件は労働者側の勝訴となりました。
契約社員やアルバイトの労働条件をめぐる判断ですが、正社員と非正規雇用との待遇差が論点となった点では、派遣労働者にも一定の影響があると考えられます。
賞与や退職金については、非正規に対して支払わなくてもよいと結論づけられたわけではもちろんありません。
今回最高裁は、賞与や退職金について、労働契約法20条にいう労働条件の相違が不合理と評価される場合もあり得るとしている点は、注意しなければなりません。
ごく簡単にいうならば、賞与や退職金を支払わないことが不合理だとして、「支払わなければならない」という結論になるケースもあるということです。
メトロコマース事件では、扶養手当、年末年始勤務手当、祝日給、夏季冬季休暇、病気休暇は、「労働条件の相違は、いずれも労契法20条にいう不合理と
認められるものに当たると解するのが相当である」と判断されました。最高裁の評価を簡単にまとめると、以下のようになります。

扶養手当 扶養親族があり、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、契約社員にも扶養手当を支給すべき
年末年始勤務手当 年末年始勤務手当の性質や支給要件、支給金額に照らせば、契約社員にも支給すべき
祝日給 年始期間における勤務の代償としてしての祝日給は、契約社員にも支給すべき
夏季冬季休暇 契約社員は、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれているので、夏期冬期休暇は契約社員にも支給すべき
病気休暇 契約社員にも、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、私傷病による有給の病気休暇を与えるべき

 
 
今回の最高裁の判断は、法律が違い事案が異なるため直接の判断には影響しないものの、派遣法とパート・有期法が「二重適用」される派遣労働者、とりわけ派遣先均等・均衡方式には、ずばり影響が出てくると考えられます。
派遣元の正社員の手当や休暇、派遣先の正社員の手当は、明らかに職務内容が異なることによるもの以外は、派遣労働者との見合いが問われる可能性があるでしょう。
派遣労働者の役割や人事評価などを通じた「位置づけ」の明確化も含めて、必要な対応をとっていきたいものです。

(2)令和3年度の局長通達について

10月20日、派遣法の労使協定方式の「一般賃金」の水準を定めた職業安定局長通達が公開されました。

 
 
局長通達は毎年6~7月に公開されることになっていますが、コロナ禍の影響が雇用・経済を直撃した状況を受けて、「これらの状況を踏まえ、秋を目途として、新型コ ロナウイルス感染症の雇用・経済への影響等を踏まえた、一般賃金の額等をお示しすることを予定しております」というコメントが出されていました。
通達の構成自体は令和2年の内容とほぼ同じであり、労使協定方式の賃金水準について2年前の統計に従って数値が更新されています。
その上で、「現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱い」が追加されました。
原則通りに2年前の統計数値をあてはめると概ね派遣賃金が引き上げとなるため、コロナ禍における雇用維持の観点から国が一定の要件を満たす場合に「従
前の水準」の維持を認めたのが今回の特例です。

具体的な要件は、以下の①~④です。

① 派遣労働者の雇用維持・確保を図ることを目的とするものであって、その旨を労使協定に明記していること。
② 労使協定を締結した事業所及び当該事業所の特定の職種・地域において、労使協定締結時点で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、事業活動を示す指標(職種・地域別)が現に影響を受けており、かつ、当該影響が今後も見込まれるものであること等を具体的に示し、労使で十分に議論を行うこと。
③ 労使協定に、一般賃金の額(令和2年度)を適用する旨及びその理由を明確に記載していること。理由については、(1)の目的及び(2)の要件で検討した指標を用いた具体的な影響等を記載することとし、主観的・抽象的な理由のみでは認められないこと。
④ ①の要件に係る派遣労働者の雇用維持・確保を図るために講じる対応策、②の要件に係る事業活動を示す指標の根拠書類及び一般賃金の額(令和2年度)が適用される協定対象派遣労働者数等を、法第23条第1項及び第2項の規定に基づく事業報告書の提出時に併せて、都道府県労働局に提出すること。

 
 
 
これら中でも②は非常に重要であり、「労使協定締結時点」で雇用調整助成金の要件などを満たしているかどうか? 特定の地域や職種で派遣契約数などが「減少している」指標が挙げられるか? といった点について具体的内容を示した上で、「労使で十分に議論を行うこと」がポイントとなります。
派遣法の原則の例外である労使協定方式は、適正に選出された労働者代表との協定締結によって成立し、さらに例外である令和3年度の特例も、有効な労使協定によって成立するため、協定締結にあたって事実上「労使で十分な議論」を経ていない場合、そもそも労働者代表が適正に選出されていない場合は、特例は無効となります。
10月20日に令和3年度の局長通達と同時に公開された「労使協定方式に関するQ&A 第3集」では、問1-9など過半数代表の選出手続きなどの項目が追加されています。
7月の「労働者派遣制度に関する議論の中間整理」でも、法違反について厳しい行政指導や指導監督を行っていくという方針が示されていますが、労使協定の労働者代表の選出についても事実上の重点項目となっています。
令和3年度の労使協定締結にあたっては、労働者代表の選出手続きや労使協議などについて、基本に立ち返った対応を徹底したいものです。
 
 
 
 
なお、今回の通達では令和3年度の賃金水準が公開されていますが、すべての職種・地域で上昇しているわけではなく、令和2年よりも下がっているものもあります。
職業安定業務統計(局長通達別添2)の場合、会社役員、電気・電子開発技術者等、自動車開発技術者、医師・薬剤師等、小売店主・店長、卸売店主・店長などの職種では、前年よりも水準が下がっています。
地域指数についても同様であり、多くの地域では令和2年より上昇していますが、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府などでは前年よりも下がっています。
職種については具体的に派遣契約の対象となっているものは少ないと思いますが、地域指数も含めてまずは令和3年の水準の現状を把握することが肝要でしょう。
 
 
 
 
ということで、今回の令和3年度の「一般賃金」局長通達の内容と具体的な実務対応について解説する緊急セミナーを以下の2会場で開催します。
①三重会場 11月20日(金)
②名古屋会場 11月28日(土) 
参加ご希望の方は、以下の詳細ページからお申込みください。
名古屋と鈴鹿で令和3年度「一般賃金」完全解説セミナーを開催します。