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ナデック通信

2020年
12月号

2021年、コロナで変わるもの、変わらないもの。

2020年もあと1か月。今年はいろいろな意味で印象に残る一年になりましたね。まさかコロナがここまで世界に蔓延して、ここまで生活様式が変わってしまうとは・・・。昨年の今頃に一年後の私たちを予想できた人は、きっとほとんどいなかったと思います。
労働法の世界でいえば、昨年から働き方改革関連法が施行されて、同一労働同一賃金がスタートして、正社員と非正規雇用との格差解消に向けて、時代の流れが一気に加速していくはずでした。それは派遣法の分野もまったく同じで、労使協定方式と派遣先均等・均衡方式の選択制による待遇改善の定着が期待されていました。
ところがいざ2020年になると、年明けからコロナの猛威が世界的に広がり、日本経済や雇用の現場を直撃しました。春からの緊急事態宣言は、いまだかつてない国策による休業であり、まさに労働者の「雇用を守ること」が社会全体としてのテーマとなりました。
ここで注目を浴びたのが、助成金です。雇用調整助成金はリーマンショックの後にも役割を果たしましたが、これがテレビや新聞でも毎日のように「コチョウキン」が話題になるという事態にもなりました。まさかこの助成金がここまで有名になろうとは、誰にも想像できなかったと思います。
昨年までは人手不足の閉塞感に包まれた雇用環境でしたが、これが急転して今年はコロナによる悲痛な解雇・雇止めが社会問題に。ものすごいスピードで3万人、5万人、7万人と膨れ上がり、この先、完全失業者数はリーマンショック時の水準を超えるとも予想されています。
すでにコロナの影響による整理解雇や景況悪化を理由とする雇止めの企業側からの相談が増えてきていますが、この流れは来年ますます増えるような予感があります。いち早いコロナの収束を心から期待しますが、残念ながら2021年はさらに厳しい状況への予防が大きなテーマのひとつになると思います。

(1)コロナで変わったものは?

コロナでさまざまなものが変わりました。
人と人との接触機会を減らすことが求められ、できれば移動することなく自宅にとどまることが求められるようになりました。
働き方という観点でいえば、テレワークや在宅勤務が推奨されるようになり、今まではその対象とならなかったような地域や業種でも、前向きに検討され導入される例が目立ってきています。
ニューノーマルな働き方としてワーケーションを取り入れる企業が増え、環境省も補助金を出すなど注目を集めています。リゾートでテレワークというと、ひと昔前までは余暇にしか見えないという風潮もありましたが、社会的にも有効性が認められてきているといえるでしょう。
結果として、働き方改革の一大テーマであった過重労働の撲滅は、皮肉なことに形を変えて劇的に改善の方向に進んだともいえます。もともとテレワークの推進自体も働き方改革のパッケージに含まれた国策の一環ですから、積極的に評価できる部分もあるでしょう。
一方で、会社に出社しない日が多くなったり、直接面談して意思疎通をはかる機会が減ることで、コミュニケーションギャップが生じたり、簿妙なニュアンスの違いが伝わらないという状況も指摘されています。
この点に関しては、パソコンが普及していなかった世代の人たちが、かつてパソコンになかなか馴染めずに苦労した時代のことを思い返して、杞憂に過ぎないと考える人もいますが、物理的に人との接触が制約されるような状況が長引けば、やはり肌感覚のような定性的な感覚も含めて、実務への影響も小さくないといえるでしょう。
人間同士が助け合って仕事をしていくには、波長を整えて呼吸を合わせていくことが欠かせません。それは理屈ぬきに膝を交えて、真剣に人間的に触れ合うことが基本となります。このようなリアルな空間でしかなしえないダイナミズムの意義は、時間や効率化といったモノサシだけでは置き換えることができない価値を内包しているといえるでしょう。

(2)コロナで決して変わらないものは?

コロナでも決して変わらないものがあります。
その最たるものは、人生との向き合い方だと思います。どんなに世の中が便利になって移動や直接の会話なしでも仕事ができるようになっても、その人自身が将来を見据えて仕事を頑張るという行為自体は変わりません。
それどころか、多様な働き方に向けた変化がぐんぐんと加速し、テレワークやワーケーションといったスタイルが違和感なく定着すればするほど、仕事を通じての社会貢献や人生の目的といった大きなフレームが本質的に問われることになります。
一説によると、移動には人間の思考を整理したり、創造力を後押しする力があるといいます。あるテーマに行き詰まっていたとき、新幹線や飛行機の中で思索にふけっていると、妙に頭が活性化してきて、考えがまとまった、といった経験をしたことがある人も多いと思います。
あるいは、自分でいくら考えても妙案が出てこないけど、相手に話を聞いてもらっているうちに具体策が思い浮かんだり、リラックスしてアイデアを出し合う中で、自分の考えが自然にブラッシュアップされていく、ということも少なくありません。これはZOOMなどでも可能ですが、やはりリアルに向き合うときの威力にはかないません。
私たちはコロナによって多くのものを失っていますが、これらはもちろん痛ましい不幸を背負うことでもありますが、社会全体としては対応力を鍛えることによって乗り越え克服し、時代がひとつ次のプロセスへと進んでいくことになるはずです。
その結果として、世の中はさらに便利になります。移動なしに自宅にいながら、人と会わずにアプリを使って、手間をかけずにワンクリックで意見集約、マッチングの加速で営業せずに新規開拓といった姿も、いずれおとぎ話ではないといえるでしょう。
だからこそ、「何のために」「どこを目指して」という目的意識や社会的意義が、今まで以上に大切となっていくのではないでしょうか。便利になればなるほど、より鮮明に本質を問う姿勢が成否を分けることになるのです。
かつて将棋の羽生九段が、テクノロジーの発展によって誰でも高速道路を使って自由にスピーディーに移動できるようになったから、その分、そもそもどこを目指すかという大局観やインターチェンジから降りてからの道のりの判断が勝負の分かれ目になる、といったことをある著書で述べていますが、そのような比喩がふさわしいかもしれません。
コロナによって多くのものを失った私たちは、これに打ち勝つことで時代を前に進めることができると思います。でも、その先にある目標は何なのでしょうか。そもそも仕事をすることの意味は?自分が成し遂げなければならないミッションとは?
今はこんな時期ですから一時的に世の中が刹那的に、金銭的・物質的なもの中心に流されがちですが、だからこそ本当の意味で人としてのあり方や目的意識の本質が問われるといえます。
特に経営者や幹部のみなさんは、チーム内でのベクトル合わせや外部環境との呼吸が難しい状況にあると思います。それゆえに、少し先を見据えて「そもそも」について改めて問い直し、ブラッシュアップする有意義な年の瀬にしたいものですね。2021年が輝く未来に向けての第一歩になるように!