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ナデック通信

2019年
2月号

「100年企業」の経営者の共通項とは?

今年は「働き方改革」の実質元年ということで、毎日のように4月から順次施行される法律への実務対応についての質問があります。年明けから公的団体での登壇や、上場企業の担当者の方と打ち合わせする機会なども続いていますが、規模の大小を問わず、業種業態に関わらず、強い関心をお持ちだと痛感します。
これから春・夏に向けて登壇の機会も増えていきますし、先日脱稿した書籍もまもなく発刊されることになりますが、そうした情報発信と日常的な顧問先での実務対応を通じて感じるのは、働き方改革にはプラス面とマイナス面があるということです。これは何においてもそうかもしれませんが、とりわけ顕著に際立った両面がこれから目に見えてくいるように思います。
「働き方改革で、従業員は働きやすくなるの?」
こんな質問も少なくありません。答えは、シンプルだと思います。ある意味では、確実に良くなります。有給休暇、時間外労働の上限規制、同一労働同一賃金、いずれも会社にとっては負担を伴うものですが、働く人の権利の保護は確実に進み、労働条件は改善される方向に進むはずです。
上と同じように、こんな質問もあります。
「働き方改革で、会社は良くなるの?」
この質問も、答えのベクトルは同じです。しかし、事柄の性格上、効果が出るにはタイムラグがあるように思います。(一歩一歩)雇用環境が良くなる→従業員が定着する→企業の業績を後押しする。基本的にはこのサイクルですが、半年や1年で簡単に環境が変わるわけではありません。この点は、例えは悪いですが花を咲かせる植物の成長に近いような気がします。
そして、この問いについては、もうひとつの側面があります。そう、働き方改革で得られる成果は、会社の健全な成長にとって「必要な」(しかも、かなり優先順位の高い)要素ではありますが、『本質的な』要素ではないということです。だから、法改正によって社内改革が後押しされることで格段に環境は良くなっていきますが、それはいわば漢方薬のようなもの。主食とすべき本質的な栄養素ではないのです。
何が『本質的な』なのか? それを議論するのはとても難しいですが、創業以来長きに渡って発展している長寿企業と向き合うことで、その糸口やヒントを見ることができる気がします。
一年ほど前から、全国の社労士仲間と長寿企業=100年企業の強みと魅力について、定期的に勉強してきました。具体的に創業者や経営者、そこで働く従業員さんからのインタビューを通じて、ヒアリングし、その結果を会社のルールブックである就業規則に落とし込んでいくという取り組みです。各グループごとの一年間の成果発表もありましたが、どのグループの報告もリアルなドラマに満ち溢れていて、私自身も感動しました。
そうした一年間の学びの中で共通することがありました。100年企業に共通するキーポイントは、やっぱり「社長」。具体的には、以下のような項目が挙げられました。

☑ 社長が怒らない。
☑ 自分は〝つなぎ役〟だと思っている。
☑ 〝恩送り〟の思いが強い。
☑ 〝頭のいい人〟を採らず、〝まじめな人〟〝面白い人〟を採る。
☑ 〝感謝〟と〝お願い〟が社長の役割だと思っている。
☑ 〝整理整頓〟〝あいさつ〟〝身だしなみ〟をすべての基本としている。
☑ 社員が豊かになるために待遇を良くすることが生きがい。
☑ 社長ばかりが対外的に目立とうとしない。
☑ 時代を超えて、〝本業〟に徹している。
☑ そして、〝経営危機〟をみんなの力で乗り越えている。

驚くほどシンクロしていて、心に突き刺さりました。どれも経験則上、実感していることばかりですが、残念ながらいずれも「働き方改革」とは関係ありません。それどころか、具体的な現象でとらえたらむしろそれとは相反するテーマも少なくありません。
心のあり方とか、ややもすると抽象的な精神論。さらには、権利とか義務、利益とか負担、保護とかといったベクトルはいっさい登場しない。でもだから、1年、2年どころか、何十年といった長いスパンで会社の発展をとらえることができているのかもしれません。ある意味これが本質の部分なのですね。
社労士として開業して今年で16年目。今まで労働法や就業規則などは自分なりに経験してきましたし、最近は講師として登壇する機会も増えてきていますが、もしかするといや間違いなくこのような視点は一番欠けている部分だと思います。そして、働き方改革の時代だからこそ、良い意味でのバランス感覚として最も必要な内容だと感じています。
この勉強会は今年もまだまだ続き、ここからが本番を迎えます。5月にはまた、メンバーとともにわがグループの〝100年企業〟さんにお邪魔します。本当にダントツの学びがいただけるような、歴史を塗り替えてこられている老舗企業さんなので、今からその日が楽しみです。
これからの働き方改革と100年企業。まったく異なる存在のようで、ある意味矛盾しているようでいて、根底ではしっかりとつながっていると心から感じます。これから私たち社労士が大切に向き合っていかなければならないテーマの表(現象)と裏(本質)だといえるのかもしれません。
しっかりこの両面と向き合いながら、お役に立てるように頑張っていけたらと思います。