メンタルヘルス不調を訴え、半年以上も会社を休職している従業員がおり、何度か復職を試みたものの元の業務には復帰が困難であり、現在も休職しています。
診察医からは「就業可能」とする診断書が出ていますが、会社としてはこのままの状態を放置するわけにもいかないため、具体的な手続きに踏み切りたいと考えています。
このような場合は、会社としての対応をどう整理すべきでしょうか?
復職の可否の判断は最終的に会社が行うことになりますが、具体的にはかなり難しい判断を迫られるケースが多いのが実際です。
特に、職種や業務内容を特定しない総合職等の場合は、従来従事していた業務以外(軽作業や事務等)でも勤務可能であれば復職させるべき(片山組事件 最一小判 平10・4・9等)と判断される例も多くみられます。
会社としては本人から提出された診断書から判断するだけでなく、主治医の意見を聞く機会をつくる等の努力を重ねることも重要です。実際に本人同席のもとで医師と面談し、会社が仕事内容等を説明する中で、就業の可否について判断を聞くケースもあります。
その上で、会社の指定医の受診を求めることも必要でしょう。従業員には健康の保持増進の一環として健康診断等の会社の指示に従う義務があるとされ(電電公社帯広局事件 最一小判 昭61・3・13)、この考え方はその後の判例にも踏襲されています(大建工業事件 大阪地判 平15・4・16等)。
また、就業規則の内容がどのように規定されているかも大切です。具体的には、休職期間が長引く場合には期間満了による「自然退職」という対応を取りうるかどうかもひとつのポイントになります。会社が留意すべきポイントとしては、次の点が挙げられます。
①職種が特定されていた労働者か? ②休職前の業務に復帰できるか? ③従事できる現実可能性のある業務があるか? ④配置や異動、職務分担などができる企業規模か?
これらの点を総合的に考慮した上で、具体的な対応策を検討していくことになります。特に、①採用時の職種や業務内容の特定や、③従事できる現実可能性のある業務の有無の判断については、企業側で対応できる余地があるケースも多いでしょう。
また、最近みられる相談事例としては、試用期間中への対応に関するものがあります。多くの企業では採用後の試用期間を設けていますが、ほとんどの場合、試用期間中の休職事由発生というケースを想定していません。
具体的には、就業規則に試用期間中に関する特例をおくことが望ましいでしょう。試用期間中だからといって直ちに解雇が可能とされるケースは少ないことから、あらゆる状況を想定したルール構築を視野に入れていくことが必要です。