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ナデック通信

2021年
5月号

あらためて「年金をもらいながら働く方法」の基本!

 5月は「5月病」の季節としても有名ですが、それまでにキャリアにピリオドを打った人が、大型連休などを境目として、また新しいステージで本格的に活動を始めていく時期となります。そんなこともあって、社労士法人では申告業務の繁忙期であるとともに、セカンドステージやリタイアメントについて相談が増える季節でもあります。
今回は、定年後の再雇用や定年延長などで働きながらもらう年金の仕組み、その他の社会保険の知識について、みなさんと考えてみたいと思います。
 
 
 
 

「在職老齢年金」の仕組みは?

 今は60歳になったら定年という時代ではありませんし、中高年のキャリアもますます多様化してきていますので、年金を受給する年齢になっても仕事を続けるのはごくごく当たり前の時代です。60歳以降に働いて会社などから給与を受けながら年金をもらうことを「在職老齢年金」といいます。
在職老齢年金の仕組みはかなり複雑で、社労士試験などでも受験生が最も苦手とする難解なテーマですが、具体的な年金額は以下の計算式で計算することになります。

【60歳以上65歳未満の支給停止額の計算式(1ヵ月)】
① 基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合   
   → 支給停止額0円(全額支給)
② 基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円以下の場合
   → (総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2
③ 基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円を超える場合
   → {(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}
④ 基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が47万円以下の場合
   → 総報酬月額相当額 ÷2
⑤ 基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が47万円超える場合
   → {47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

 まず、「基本月額」「総報酬月額相当額」という言葉が出てきます。耳慣れない用語ですが、在職老齢年金を語る上では欠かせない基本です。「基本月額」とは老齢厚生年金の年額を12で割った額、「総報酬月額相当額」とは給与(月給)と賞与(1年分を12で割った額)のことをいいます。
 そして、在職老齢年金を考える上では、ポイントとなる数字が2つあります。「28万円」と「47万円」です。この2つの数字を使って、在職老齢年金の金額を計算することになりますが、具体的には5つのパターンがあります。
 ①は、基本月額(年金)と総報酬月額相当額(給与)を合わせて28万円以下というケースです。これは年金が問題なく全額支給されるケースですので、特に考えるべきことはありません。
 ②は、基本月額が28万円以下、総報酬月額相当額が47万円以下というケースです。この場合は年金と給与の合計が「28万円」を超えていますので、超えた分の2分の1が年金からカットされます。
 ③④⑤については少し複雑な仕組みですので、先ほどの計算式と以下の事例を見ながら、みなさんで考えてみてください。なお、「28万円」と「47万円」はずっと固定額なわけではなく、賃金や物価の変動に応じて見直されます。



 
 
 
 
 ちなみに、在職老齢年金の仕組みは60歳から65歳までだけではなく、65歳以後の年金についても存在しますので、働きながら受給する場合は支給停止額が計算されます。こちらは「47万円」の数字しか登場せず、計算式もシンプルですので、気になる人は日本年金機構のホームページなどをご覧ください。
 
 
 
 

年金を「繰り上げ」「繰り下げ」するとどうなるの?

 年金を本来の受給年齢よりも前倒しでもらうことを「繰り上げ」、逆に受給の時期を後にすることを「繰り下げ」といいます。これは年金額にも影響し、繰り上げると早くもらう分だけ年金額が減らされ、繰り下げると逆にその分だけ年金額が増えます。
繰り上げや繰り下げは珍しいことではなく、金銭的に厳しいとか健康に自信がないから早くもらいたいという人や、今は生活に困っていないからの後々の年金額を増やしたいという人も少なくありません。
ただ、このような場合はあくまで調整後の年金額に在職老齢年金の計算式を当てはめることになるため、42%などいった調整率がそのまま掛け算されるわけではない点は、注意したいものです。
日頃の業務で在職老齢年金のお話しをすると、「せっかく今まで年金を掛けてきたのに、働いているから減らされるのは納得がいかない」という人もいます。
そもそも年金制度は世代を超えて支え合うことで老後の生活を安定させるための仕組みです。単純に年金受給が減ったら嫌だという発想ではなく、あらかじめ今の在職老齢年金を理解した上でライフスタイルを考えていきたいものですね。
『月刊経理WOMAN』5月号に、「年金をもらいながら働いている人が知っておくべき『税金と社会保険』の必備知識[社会保険編]」を寄稿しました。
7ページほどの記事ですが、図や表を交えて分かりやすく解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。
『経理WOMAN』 に「在職老齢年金」について寄稿しました。