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ナデック通信

2017年
10月号

働き方改革のゆくえと解散総選挙は?

多くの人が予想していなかったことかもしれませんが、今年は「選挙の秋」になりました。

働き方改革については、厚労省も審議会もまさに限界に近いスケジュール感の中で、改正案要綱をめぐる事前手続きが何とか臨時国会に間に合ったという状況でした。

政府も今秋の解散総選挙はまったく前提としておらず、むしろ今後の施行日程を踏まえて全力で臨時国会での成立を期そうとしたというのが実際のところです。

選挙が終われば国会が召集され、新たな内閣が組閣されますが、改正案については上程されてもとても年内成立には間に合わないと見られています。

選挙結果を踏まえた国会に動向にも左右されますが、年末年始を経て仕切り直した来年の通常国会でしっかりと成立させたいというのが政府の方針のようです。

そうすると来年度の予算が成立してからの話しになりますから、3月末以降と考えると、ざっくり半年ほどスケジュールがずれ込んだだけと考えることができるでしょう。

ということは、この半年間は、政府や国会の動向も睨みながら次に向けた対策を具体的に実行する大切な期間ということになりますね。
 
 
 
働き方改革については、関係する法律が一体化された法律案要綱が打ち出されています。この中には、労働基準法、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法などの複数の法律が入り交ざっています。

選挙後に国会に再提出される法律案もこの形が維持されるはずですので、関係法律について横断的な理解と対応が必要となります。

48ページに渡る法律案要綱をすべて読んだ人ならお気づきだと思いますが、これだけ多岐な内容のものが一体になっていますので、頭の中を整理していくことも大切です。

それにあたって、私が現段階でおすすめしたいのは、以下のような整理です。

① 選挙結果の影響を受けにくい内容、受けやすい内容で分ける。
 → 労働基準法関係でいえば、電通事件以降の社会的要請が大きい労働時間の規制のテーマは選挙の影響は受けにくく、連合などが慎重な対応を求めている企画業務型裁量労働制や高度プロフェッショナル制は影響を受けやすいといえます。

② 従来から労働法の規制内容と、同一労働同一賃金の内容で分ける。

 → 労働基準法、安全衛生法など国が使用者を規制をする強行法規への対応を優先すべきであり、本来は使用者と労働者との間の自由な契約関係によるべき同一労働同一賃金への対応はその後の問題になると思われます。

③ 行政指導の仕組みや罰則の有無で分ける。

 → 労働時間の上限規制や年次有給休暇の強制取得は罰則付きで行政指導も強化されることが予想され、労働契約法やパートタイム労働法、労働者派遣法の内容には行政指導の強弱があることが予想されます。
 
 
 
ということで、今から対応すべき内容の最右翼はやはり労働時間の規制。これは選挙結果に左右されないテーマであることは間違いありませんが、むしろ行政指導についてはさらに強化される方向が打ち出される可能性もありますね。

とりわけ、現在特別条項を使って時間外労働を行っている場合は要注意です。「年間720時間以内」とか「月100時間未満」といった文字が新聞上でもしばしば踊っていますが、これらは実務的に落とし込むのは結構大変です。

「年間720時間」は、休日労働を含まない時間外労働のみの規制です。逆に「月100時間未満」は、休日労働も含めてカウントした数字です。この定義だけをみても、かなりややこしいですね。

そして、もっとも頭を悩ませるであろう点が、「2か月から6か月までの平均で、月80時間以内」。これも休日労働を含んだ数字ですが、頭を抱える人も少ないくないと思います。
 
 

 
厳密を期すために法案要綱を引用すると、以下の通りです。

対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと
 

 
 
 
これは、ある月を起点として遡って、1か月、2か月、3か月、4か月、そして5か月。どの平均をとってみても、絶対に「80時間」を超えてはならない、というルールです。

労働者1人ごとに、わざわざ1か月、2か月・・・といった遡った平均値を割り出す計算をしなければ、適法に時間外労働をすることができなくなる可能性がある。とんでもなく煩雑で恐ろしい仕組みですね。

選挙にもまったく影響がないことが予想される以上は、これらの改正テーマについては自社の現状に照らしてしっかり押えておく必要があります。

これからはよほどのシステム化や時間管理の仕組みを導入しないかぎりは、80時間に迫るような時間外労働はタブーになる時代が来るといわれていますが、まさにそうだと思います。

改正はまだ先と思わず、早め早めの対応を心掛けていきたいものです。