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ナデック通信

2016年
6月号

「社会保険の適用拡大」のルールについて学びましょう!

今秋から社会保険の適用範囲が拡大されます。社会保険については世間でも何かと話題にされることが多いですが、10月1日からは今までは被扶養者という扱いがされていたパートタイマーの方々の一部が、社会保険に加入する時代が来ることになります。

「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金機能強化法)が10月1日から施行され、以下の5つの要件を満たす人については、新たに社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者となります。
 
 
 
 
 

 

(1)1週の所定労働時間が20時間以上であること。
(2)雇用期間が継続して1年以上見込まれること。
(3)月額賃金が8.8万円以上であること。
(4)学生でないこと。
(5)常時500人を超える被保険者を使用する企業(特定事業所)に勤めていること。

 
 
この適用拡大については、先日、日本年金機構から「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集」が公開されました。Q&Aでは、①被保険者資格の取得要件(総論)、②特定適用事業所、③1週間の所定労働時間が20時間以上、④雇用期間が継続して1年以上見込まれること、⑤月額賃金が8.8万円以上の5項目について、全29のQ&Aが掲載されています。
 
 
 
Q&Aの中から、気になる項目をピックアップします。
 
 
問7 「被保険者の総数が常時500人を超える」とは、どのような状態をさすのか?

→適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が、12か月のうち6か月以上500人を超えることが見込まれる場合をいいます。分かりやすくいえば、1年のうち半年以上は500人を超えているような状態ということになります。
 
 
問19 施行日時点において、雇用期間が継続して1年以上見込まれるか否かの判定は、どの時点から行うのか?

→施行日時点で判定を行います。施行日前から引き続き雇用されている人であっても、施行日の時点で雇用期間が継続して1年以上見込まれる場合は該当します。
 
 
問25 健康保険の被扶養者として認定されるための要件の一つに、年収が130万円未満であることという収入要件があるが、この要件に変更があるのか?

→健康保険の被扶養者の要件は、従来とは変わりません。ただし、年収が130万円未満であっても、新たな(1)~(5)の要件を満たした場合には、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
 
 
問29 被保険者資格を取得後に月額賃金が8.8万円未満となった場合は、被保険者資格は喪失するのか?

→原則として被保険者資格を喪失することはありませんが、雇用契約等が見直されて8.8万円未満となることが明らかとなった場合等は例外となることももあります。
 
 
 
なお、10月1日からの改正は500人以下の規模の中小企業には関係ないと思われがちですが、そうではありません。現在は「4分の3要件」の根拠とされている昭和55年6月6日付の内かんが廃止され、「年金機能強化法」で要件が明確にされます。
 
 

昭和55年6月6日付内かん
 1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上である就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取り扱うべきものであること。
年金機能強化法
 事業所に使用される者であって、その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第2条に規定する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3未満である同条に規定する短時間労働者又はその1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
 イ 1週間の所定労働時間が20時間未満であること。
 ロ 当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこと。
 ハ 報酬について、厚生労働省令で定めるところにより、第22条第1項の規定の例により算定した額が、88,000円未満であること。
 ニ 学校教育法第50条に規定する高等学校の生徒、同法第83条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。

 
 
これにより、現在は1日または1週間の労働時間と1か月の労働日数で判断されている要件が、10月1日からは1週間の所定労働時間と1か月の労働日数で判断する要件へと変わることになります。10月からは社会保険の加入対象となる人の範囲が微妙に変わることになるため、注意する必要があります。

また、現在は厚生年金保険の標準報酬は98,000円が最低等級とされていいますが、10月からは新たに「88,000円」の等級が追加されることになります。いずれも、当然のことながら企業規模に関係なく適用されるものですので、「うちの会社には関係ない」と勘違いすることのないようにしたいものです。
 
 
 
社会保険の加入漏れについては社会問題にもなっており、厚生労働省は当初は200万人程度と推計していた未加入者は調査によってさらに増えそうだとしています。「一人親方」としているものの実態が加入漏れだというケースも少なくないことから、「社会保険の適用拡大」は今後の社会保険制度の方向性にも影響を与えていくことは間違いないでしょう。

建設業や派遣業などの許認可業種についても、社会保険加入が当然の許可基準として厳しいチェックがさらに厳格化されています。これからの事業運営にあたっては、さらなるコンプライアンス意識の強化が大切となっていくでしょう。