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ナデック通信

2015年7月号

派遣法改正が派遣労働者にとってもプラスになる理由とは?

労働者派遣法が、6月19日、衆議院を通過しました。議論の場は参議院に移りましたが、9月末までの大幅な会期延長が行われたことにより、今国会での成立は確実だといわれています。

過去2度に渡って事実上の廃案になってきた同法案ですが、「3度目の正直」になりそうということで、業界もすでにその方向で動き始めています。今月以降、法改正をにらんだセミナー等が増えそうですし、私のもとにもさまざまなお声がけがあります。

 

 

今回の派遣法改正については、実務対応以前に、憂慮すべきことがあります。それは、法改正への反対意見が加速する中で、「派遣は悪」だというイメージが助長されているということ。そして、それらの意見の多くは、必ずしも改正案の正確な内容や理解を踏まえたものではないということです。

もちろん、ある法律をめぐって賛成、反対意見が自由に議論されることは望ましいことですし、派遣法についてももとより万全なものではなく、種々の問題をはらんでいることは事実でしょう。根強い反対意見があることは、過去2回の法案提出時と、基本的には同じです。

その上で私が感じるのは、誤解と短絡的なイメージによる理解がさらに加速してしまっていること。そして、本来は派遣法とは無関係であるいわゆる「安保法案」への意見・態度に連動する形で、派遣法が語られる風潮が根強いことです。

社労士は実務家であるとともに派遣法も含めた労働法の専門家ですから、そうした立場から正確な改正案への理解について情報発信したり意見表明することもまた大切だと考えています。

世の中では「派遣法改正は労働者にとって悪だ」という文脈で語られることが圧倒的に多いです。私は、「派遣法改正は(多くのケースで)派遣労働者にとってもプラスになる」と考えています。今回はそのあたりの事情や理由について、少しまとめてみたいと思います。

 

 

改正案についての懸念は、大きく2つあります。

①期間制限の仕組みが抜本的に見直され、業務単位から人単位のルールに変更されることで、結果的に「派遣労働者が増える」のではないかという心配

②(有期雇用の)すべての派遣労働者の期間制限が一律3年までとなることで、3年後に雇止めとなり路頭に迷う人が激増するのではないかという懸念

前者は「生涯派遣が増える」という表現で、批判されています。後者は「3年で首切り」というフレーズで、批判されています。お気づきの方も多いと思いますが、両者は表裏の関係にあります。

今回の改正は、派遣労働者の活躍の場が広がる方向性と、派遣労働者の雇用期間が制限される方向性の両面を持っています。この国において今まで微妙な立ち位置にあった派遣という働き方について、バランス感覚を持って調整しているのです。

 

 

派遣法はそもそも「常用代替防止」(派遣労働者が派遣先の正社員の職を奪ってはいけない)という考え方のもとに作られていますから、こうした懸念が持たれること自体は自然な流れではあります。

ただ今回の改正案は、ざっくりと言ってしまえば(派遣元との雇用関係が)有期契約の派遣労働者は上限3年、無期契約の派遣労働者は上限なしになるというものです。

「3年で人を変えれば、どこまでも派遣が使える制度になってしまう」という批判も少なくありません。ただ、こうした懸念は的を得たものではなく、新たな「3年ルール」は基本的には派遣労働者の働き方をバックアップするものだといえます。

今までの「業務単位の期間制限」は、派遣元と派遣先との派遣契約の途中で勤務を開始する派遣労働者にとっては、かなり酷な部分がありました。極端な例では、働き始めて1か月でも、3年の期間制限が到来すれば、その時点で雇止めとなったからです。

これはその労働者の資質とか努力とはまったく無関係に、機械的なルールによって雇用の場が奪われてきたことを意味します。今までの「3年ルール」は制度としては合理的なものでしたが、実際に働く派遣労働者の視点に寄り添ったものとはほど遠かったのです。

 

 

今回の改正では、働く人を単位とした期間制限のルールが走り出すことになります。このことにより、派遣元に入社・就業するタイミングに関わらず、すべての派遣労働者が上限3年まで派遣先で働くことができるようになります。

これは派遣労働者にとってメリットであるのと同時に、派遣先にとってもメリットになることです。すべての派遣労働者に3年まで就業してもらえることで、その3年間に当該労働者の知識や能力の向上を見守り、働きぶりを評価することができるようになります。

派遣先によっては、まずしっかり職場に慣れてもらって、必要な経験を積んでもらったならば、その後は派遣労働者を直接雇用したいと考える例もあります。昨今の厳しい雇用環境の中で、むしろそうしたケースが増えてきているのが実際です。

半年とか1年では十分な経験を積んでもらい、資質を判断することが困難な場合でも、3年という期間が与えられることによって、採用する側にとっても働く側にとっても、相当な熟慮期間となることが考えられます。

雇用における若者のミスマッチが加速する時代の中で、より健全な意味で派遣制度が機能していく1つの要素にもなっていくことでしょう。

 

 

また、期間制限のない26業務の制度が廃止されることで、派遣労働者の雇用が奪われてしまうという指摘については国会でもさまざまな議論があります。「約40万人の派遣労働者が3年後にはいっせいに雇止めとなってしまう」という議論も多く聞かれます。

ただ、26業務のうちで純粋な意味で「無期雇用」の状況にある派遣労働者はごく一部であり、現実には有期雇用を更新している例がほとんどです。3年以内に退職したり、ほかの派遣先に移る例も少なくないことから、一律な批判はあたりません。

それでも、長期間に渡って26業務の派遣就業に従事し、4~50代の年齢層にあたる場合には、現実問題として雇用が奪われてしまうことになるケースもあります。特に特殊なスキルを持つことにより高待遇を得ているような場合は、今後のキャリア設計が深刻になります。

そうした例にも対応するために、今回の改正では厳しい雇用安定措置がすべての派遣元に義務づけられます。1つの派遣先で3年間に渡って就業してきた派遣労働者に対して、派遣元は次のいずれかの選択を取らなければならないのです。

①派遣先への直接雇用の依頼
②新たな派遣先の提供
③派遣元での無期雇用
④その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置

①から③までは読んで字のごとくだと思いますが、④については具体的には職業紹介などの斡旋を派遣先に求めることをイメージすると分かりやすいでしょう。このいずれかを行うことが派遣元に義務づけられ、これを実行しない派遣元には厳しい行政指導が下されることになります。

 

 

さらに今回の改正によって、届出制の特定労働者派遣事業が廃止され、許可制の一般労働者派遣事業に一本化されることになります。資産要件が求められない特定事業とは異なり、一般事業には2,000万円以上の基準資産などの厳しい要件が課せられるため、業界全体としてコンプライアンス意識が高まることは間違いありません。

「ブラック企業」という表現に凝縮される、就業条件明示、残業代、有給、社会保険といった面におけるコンプライアンス違反は、実態として従来届出のみをもって事業が開始できた特定事業に多くみられた現象です。すべての派遣事業が許可制となることで、全体として派遣労働者にとって働きやすい業界へと、一歩近づくことになるでしょう。

また、許可要件となっている社会保険への加入についても許可申請および更新時のチェックが強化され、従来以上に徹底した指導が行われることになります。これにより、さまざまな許認可業種の中でも、より働く労働者の保護に資するルールが構築されることになるでしょう。

 

 

以上のように、今年予定される派遣法の改正は、派遣労働者の視点から見てもプラスの要素を相当に含んでおり、むしろ現場で働く人たちの保護が主な目的とされた内容となっています。

もとより改正内容は完璧なものではなく、法体系としてのバランス感覚を重視するあまりに、26業務の期間制限の撤廃など、一時的には混乱や不利益が生じかねない部分もありますが、それでも全体として改正前よりも一歩前進する内容であることは間違いありません。

それにも関わらず、誤解と偏見に満ちた言論も多いことに戸惑う部分もありますが、正確な情報発信とともに、業界を理解する一員としても責任ある意見を述べていくことが、専門家としても求められているのだと思います。

その上で改正後の実務について、しっかりと対応させていただく中で、派遣元や派遣先の実務を担う方々、そして派遣で働くみなさんのお力になれるよう、いっそう奮起していきたいと思います。

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