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ナデック通信

2022年
8月号

「人材開発支援助成金を活用しよう!」

今春から人材開発支援助成金に「人への投資促進コース」が新設され、令和4年度から令和6年度まで実施されています。岸田政権の目玉政策として新しい資本主義実現会議が設置され、人的資本への投資支援施策についての議論が進められていますが、この中で「人への投資」の「能力開発」「労働移動」に関する支援策・内容について国民からの提案が募集され、742件の提案が寄せられました。3月30日に公開された主な提案の概要では、以下の事項が提起されています。

・企業が従業員に対して実施する研修(Off-JT)について様々な分野をオンラインで効率的に学びたいという課題に対する提案
・会社から求められるスキルだけでなく、労働者自らが必要と思うスキルを伸ばしたいという課題に対する提案
・学び直しのための時間がとれないという課題に対する提案
・自社が求めるスキルに特化して専門家にカリキュラムを作成してほしいという課題に対する提案
・デジタルなど成長分野で即戦力の者を採用したいという課題に対する提案
・成長分野への労働移動を促進していくべきという課題への提案
・学び直しのための費用を支援してほしいという課題への提案
・非正規雇用労働者の教育訓練を行い、正社員化してほしいという課題への提案

これらの提案や問題提起を受けて、令和4年度の実施に向けた対応方針として、すべての訓練のオンライン研修(eラーニング)化、定額受け放題研修サービス(サブスク)などの対象化、自発的受講の教育訓練費用への支給対象化、すでに休暇制度導入済の企業への助成拡大などが具体化され、人材開発支援助成金の対象・範囲が拡充されました。「人への投資促進コース」は、教育系の助成金の範囲が広がることで事業主の選択肢が増え、多様な人材教育や自律的な働き方を推進する上で積極的な活用が期待されます。

「人への投資促進コース」は6つの種類の訓練などに区分されますが、それぞれの訓練の概要を簡潔に整理します。

(1)高度デジタル人材訓練

DX推進や成長分野などでイノベーションを推進する高度デジタル人材の育成の訓練を行う場合などに助成が行われます。高度デジタル人材訓練の対象は日本標準産業分類の大分類が「情報通信業」であり、産業競争力強化法に基づく事業適応計画やDX認定(独立行政法人情報処理推進機構)などを受けていることが要件となります。
正規社員・非正規社員ともに対象となりますが、助成金を受けようとする事業所で訓練実施期間中に「訓練別の対象者一覧」(様式4号)に記載のある雇用保険の被保険者であり、訓練を受講した時間数が実訓練時間数の8割以上であることが必要です。カリキュラムのある実訓練時間数は10時間以上で、OFF―JTであり、職務関連訓練でなければなりません。

(2)成長分野等人材訓練

海外を含む大学院に正規過程、科目等履修生、履修証明プログラムでの訓練を行う事業主に対して助成が行われます。正規社員・非正規社員ともに対象となり、カリキュラムのある実訓練時間数が10時間以上あることが要件となります。海外の大学院の場合は、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革、クリーンエネルギー、バイオ、宇宙等の先端技術、特定の経営分野などに限定されます。

(3)情報技術分野認定実習併用職業訓練

IT分野未経験者の即戦力化のためにOFF-JTとOJTの組み合わせの訓練を実施する事業主に助成が行われます。「情報通信業」に限定され、IT関連業務を主に担う組織やDXを推進する組織を有していることが必要です。訓練開始時点で15歳以上45歳未満の正規社員が対象となり、原則としてキャリアコンサルティングを経てジョブカードの交付を受けることが前提となります。
OJT指導者は、IT関連資格(ITSSレベル2以上)を取得している者、または実務経験が10年以上の者であることが必要となり、OFF-JTについては事業外訓練に限られます。実習併用訓練の計画に沿って「適格な指導者」のもとで計画的に行われるOJTが該当し、訓練開始日の2か月前までに認定を受けて行われる実習併用職業訓練を助成の対象としています。

(4)長期教育訓練休暇等制度

働きながら訓練を受講するための長期休暇制度や短時間勤務等制度を導入する事業主に対して助成される制度であり、「長期教育訓練休暇制度」と「教育訓練短時間勤務等制度」があります。
「長期教育訓練休暇制度」は、労働者が自発的に訓練を受講するための休暇制度であり、30日以上の長期教育訓練休暇の取得が可能な制度を導入し、実際に適用した事業主に助成されます。
「教育訓練短時間勤務等制度」は、労働者が自発的に訓練をするための制度であり、最低1時間、30回以上の所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除が可能な制度を導入し、実際に適用した事業主に対して20万円が支給されます。

(5)自発的職業能力開発訓練

労働者が自発的に受講した事業場外職業訓練について、制度に基づいて直接的な経費の全部または一部を負担する事業主に対して助成され、事業主からの業務命令ではなく、労働者が自発的に行った訓練が対象となります。
全訓練の8割以上受講、実訓練時間数が20時間以上であること、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるための訓練であること、事業外訓練であることなどが要件となります。

(6)定額制訓練

「定額受け放題サービス(サブスクリプション)」とは、広く一般に公開されており、さまざまな人が受講できるもので、1訓練当たりの対象経費が明確でなく、定額制で複数の訓練を受けられるeラーニングサービスのことをいいますが、一定の要件のもとに労働者のために利用する事業主に対して助成されます。
対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であり、計画時に対象者一覧に記載されている者で、修了した訓練の時間数が1時間以上である訓練に限られ、合計に含めることができる訓練は職務関連訓練に限られます。

「人への投資促進コース」は、政府が推進するデジタル化に対応した高度人材の開発のほか、自律的な働き方が求められる時流を反映した労働者の自発的な訓練にも助成金が適用されるなど、従来よりもより多様な労働者が活用できる柔軟な仕組みになっていますので、自社の現状やニーズに応じて効果的な実施を検討したいものです。

 

『ビジネスガイド』8月号に、「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)と従業員へのリスキリング」を寄稿しました。「特集1」として、「人への投資促進コース」の活用例も含めて、10ページに渡って掲載されています。

「人への投資促進コース」は、まだまだ申請実績が少なく具体的な実務が不透明な部分もありますが、具体的な実務の流れを交えてケーススタディ的な事例を3つほど取り上げて解説していますので、関心のある方はぜひお読みください。

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