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ナデック通信

2020年
3月号

「新型コロナウイルス」に対応した現実的な労務管理とは?

新型コロナウイルスの蔓延が社会問題になっています。新聞でもテレビでも、毎日のようにトップニュースになっています。政府も国民に対してここ当面の間の大規模なイベントなどの開催の自粛や延期などを求め、安部首相も3月末までの小中高校の休校を要請に踏み切りました。
コロナウイルスの脅威は昨年から報道されていましたが、ここまで私たちの生活や活動に影響が及ぶと予期していた人は少ないと思います。今では、労働者の感染防止はもちろん、働き方の工夫、万が一の場合の休業まで、企業の労務管理の現場にも大きな影響が出てきています。
事業者向けの国からのメッセージとしては、2月1日に厚生労働省から「新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQ&A」が公表され、事業者や職場が留意すべき点が簡潔にQ&Aに示されています。多いときは数日おきのペースで更新されていますので、適宜内容を注目していきたいものです。
 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
 
2月1日付けで指定感染症として定められたことにより、感染症法に基づき都道府県知事より入院の勧告や就業制限が指示された労働者については、会社に就業させないようにするなどの対応が必要です。ただし、労働安全衛生法第68条に基づいて病者の事業者が強制的に就業制限を行うことはできません。
また、新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、事業主が一方的に年次有給休暇を取得させることはできませんので、万が一そのような状況が発生した場合は、労働者が自主的に有給休暇を取得したり、会社の休業制度を利用するなどの対応を取ることが適切です。
感染防止や感染者の看護などに対応する労働者については、労基法第33条第1項の「災害その他避けることができない事由」に該当するとされています。ただし、あくまで「必要な限度の範囲内」に限り認められるとされるため、過重労働による健康障害を防止するための措置が求められることになります。
一方、事業所の目線から考えて実務的に最も判断が難しいのが、発熱などの症状がある労働者が休業した場合の休業手当の支給の有無についてです。Q&Aの問4(2月25日時点版)では、以下のように記載されています。
 

<発熱などがある方の自主休業>
問4 労働者が発熱などの症状があるため自主的に休んでいます。休業手当の支払いは必要ですか。
会社を休んでいただくよう呼びかけをさせていただいているところですが、新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休まれる場合は、通常の病欠と同様に取り扱っていただき、病気休暇制度を活用することなどが考えられます。
一方、例えば熱が37.5度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

 
新型コロナウイルスに感染した労働者が休業する場合は休業手当を支払う必要はありませんが(問2)、労働者が新型コロナウイルスかどうか分からない時点で自主的に休業する場合は基本的に通常の病欠と同様となります。一定の症状があることにより使用者の判断で労働者を休業させる場合は、基本的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当を支払う必要があります。
労働基準法26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」としています。したがって、「使用者の責に帰すべき事由」がある場合は休業手当が発生し、ない場合は発生しません。
「37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」はコロナウイルスの感染が疑われるとされますが、そのような場合でも、「使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります」としています(問3)。
労働者が休業する場合に休業手当を支給することは労働者保護の観点から望ましいことですが、国が全国一律にイベントや集会の自粛などを求める状況の中で、「熱が37.5度以上」という症状の労働者が出勤するか休業するかの判断を本人の自主性に委ねることは、ケースによっては労務管理上の問題が出てくる可能性もあります。
「熱が37.5度以上」という状況の中で、出勤か欠勤かは本人に判断させるという原則のみにとらわれてしまうと、逆に会社が休業を指示すると休業手当が発生するという現実を横目に、特段の指示をせずに暗黙裡のうちに本人に期待してしまい、かえって体調の悪化や他の労働者への感染といった状況を招いてしまうことにもなりかねません。
その意味では、上司や人事部の適切な判断によって労働者を休業させたり、特別休暇を与えるなどの柔軟な対応を取ることも、状況によっては労務管理上必要な措置となると思います。
このような新型コロナウイルスへの対応が直接的に求められる事業所は一部かもしれませんが、予防的な措置の意味ではあらゆる業種業態の事業所が取り組んでいかなければならない時期です。感染の拡大を防ぐ意味でも、必要な情報収集対応に努めていきたいものです。
(追記:「令和2年3月1日時点版」では「37.5度以上」の記載は削除されていますが、その経緯や理由などは示されていません。したがって上記の論点自体は変わらないものと思います)