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ナデック通信

2022年
1月号

「2022年の労働・社会保険関係の改正の動向は?」

 新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。まだまだオミクロン株をはじめとするコロナの脅威に十分に警戒していかなければなりませんが、今年こそは2年余に渡るコロナの試練から解放されて、新たな未来へと確かに歩み出す一年になることを心から願っています。今年も労働・社会保険の専門家として中小企業の現場に寄り添う発信を心掛けつつ、折に触れてスパイスの効いた独自の切り口を折り込んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

2022年の法改正の概観

2022年も前年に引き続き、労働・社会保険関係の法改正が相次ぐ予定です。とりわけパワハラ防止法の中小企業への施行や、男性の育児休業取得を推進する育児・介護休業法の改正などがクローズアップされていますが、短時間労働者の社会保険適用拡大なども企業経営に直結する大きな改正点だといえます。また。労働法そのものではありませんが、電子帳簿保存法、個人情報保護法、民法改正なども具体的な実務への影響が大きい内容だといえるでしょう。すでに確定している2022年の改正点を以下に整理します。

2022年1月~ 雇用保険マルチジョブホルダー制度(高年齢被保険者の特例)
傷病手当金の支給期間の通算化
電子帳簿保存法
4月~ パワハラ防止法(中小企業)
育児・介護休業法(雇用環境整備、育休周知・意向確認など)
女性活躍推進法(行動計画・情報公表)
年金制度改正法(在職年金、受給開始時期など)
個人情報保護法
民法改正(18歳成人)
10月~ 短時間労働者の社会保険適用拡大(中小企業)
育児・介護休業法(産後パパ育休、分割取得など)
雇用保険料の引き上げ

(1)雇用保険のマルチジョブホルダー制度

雇用保険のマルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が一定の要件を満たす場合に申出を行うことでマルチ高年齢被保険者となれるというもので、就業が不安定になりがちな高齢者の雇用安定や就業意欲の向上が期待されます。傷病手当金の支給期間通算化は、原則1年6か月の支給期間中に出勤しても期間が通算されることにより、がん治療のように休職と復職を繰り返すケースにも対応できるようになります。いずれも時代を反映した改正内容だといえるでしょう。

(2)パワハラ防止法

パワハラ防止法では、労働者からの相談に応じ、適切に対応するための雇用管
理上の体制を講じる義務が事業主に課せられ、具体的には、相談窓口の設置、パ
ワハラ禁止規定や懲戒規定の策定、社内におけるパワハラ防止のための周知・啓
蒙などに取り組むことが必要です。パワハラについては国の指針で、(1)身体攻撃、
(2)精神的な攻撃、(3)人間関係からの切り離し、(4)過大な要求、(5)過小な要
求、(6)個の侵害の6つの類型が公表されていますが、中小企業においても、これ
らの内容を十分に意識した現場対応が求められるでしょう。

(3)育児・介護休業法

改正育児・介護休業法では、男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設などが制度化され、2022年から段階的に以下の内容が施行されます。

①男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(2022年10月~)
②育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(2022年4月~)
③育児休業の分割取得(2022年10月~)
④育児休業の取得の状況の公表の義務付け(2023年4月~)
⑤有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(2022年4月~)

 まれに男性の育児休業取得が義務化されると理解している人もいますが、①はあくまで出生後8週間以内に男性が柔軟に取得できる育児休業制度のことであり、②で取得対象の男性に対して育児休業制度について説明し、取得の意向を個別に確認することが義務化されることになります。事業主は、男女問わず該当者が育児休業を取得できる旨を通知・説明した上で、取得を促すための意思確認を行うことが義務づけられます。

(4)女性活躍推進法、年金制度改正法

パワハラ防止法や育児・介護休業法だけでなく、女性活躍推進法も含めてこれらの改正内容に共通するのは、従来の昭和的な性別役割分担から脱却して、男性も女性も変わりなく活躍できる多様性が求められているという社会的な要請が根底に流れている点です。年金制度改正法の目的が、女性や高齢者の就業促進などを通じて、より多くの人がより長く多様な形で働ける状況に対応することにある点とも一貫しているといえるでしょう。法改正への対応にあたっては、制度の内容そのものを的確に把握することはもちろんですが、こうした趣旨を通じて横断的に理解を深めていくことも大切でしょう。

(5)職業安定法

2022年は職業安定法の改正も予定されています。従来、職安法では、広い意味での雇用仲介サービスについて、①職業紹介事業、②募集情報等提供事業、③その他の雇用仲介サービスに区分されてきましたが、③について実態把握と定義づけを行なった上で新たに「届出制」とし、法律の規制の対象としていくことになります。通常国会で予算が成立後、審議されて可決・成立する見込みですが、当事者である雇用仲介サービスはもちろん、広く人材サービスの提供者全体にも大きなインパクトを与える内容だといえるでしょう。

(6)電子帳簿保存法、個人情報保護法、公益通報者保護法、民法

1月からの電子帳簿保存法や個人情報保護法の改正や4月からの民法改正による成人年齢の引き上げ、6月までに施行される改正公益通報者保護法なども実務への影響が大きいと思います。全体としては事業者の利便性の向上や規制緩和の方向の改正点になりますが、成人年齢の引き下げについては入社などにともなって労働者と会社などが個別契約を結ぶ場面への影響があると考えられますので、事前の対応を万全にしておきたいものです。
 
 
 

多様な人材による多様な働き方に向かって

2022年はここ2年ほどコロナ禍に苦しめられた社会がポストコロナ、アフターコロナに向かえるかの岐路に立つ一年になりますが、同時にコロナの苦難によって奇しくも加速されたインフラによる場所的・時間的拘束を超えた働き方への環境整備や、多様な人材による多様な雇用形態に向けての取り組みが具体的に前進していく一年にもなりそうです。それぞれの立場でより充実した職業人生を送るための一歩となるよう、私どもも微力ながら課せられた役割の中で全力で取り組んでいきたいと思います。