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ナデック通信

2021年
10月号

「派遣事業適正化の《自主点検》のポイントは?」

秋といえば行政調査の季節です。労働基準監督署や年金事務所もそうですし、もちろん労働局による派遣事業の調査もあります。今年は長期化するコロナ禍の状況を受けて、チェックシートを用いた事業所の「自主点検」が実施されることになりました。9月中旬に、すべての派遣事業所に「労働者派遣事業の適正化のための自主点検表」が郵送されています。先月ある派遣事業所にオンライン登壇のためにお伺いしていたとき、この自主点検表についてお話ししていたら、ちょうど郵送で現物が届いたという場面もありました。
具体的には、「令和3年度労働者派遣事業者の適正化推進事業」を受託した公益社団法人全国労働基準関係団体連合会(全基連)により実施されていますが、それぞれの事業者は、自主点検表の項目について確認・点検を行った上で、点検結果を専用WEBサイトに入力して回答することになります。回答フォームでは、事業所名称、所在地、従業員数、相談・個別訪問支援の希望の有無が必須項目となっています。点検表は紙ベースで届きますが回答はインターネットを介して行う点に注意しましょう。
派遣事業適正化自主点検特設サイト
https://haken-tenken.jp/
点検項目のチェックが終わったら、改善すべき点がないかを確認します。点検表では、それぞれの点検項目について「〇〇と回答した場合は改善が必要です」というコメントが付けられており、改善が必要な回答結果がすぐに分かるようになっています。また、自主点検後の改善への取り組みにあたっては、派遣事業の実務に詳しい社労士などが無料相談に応じたり、無料コンサルティングを行う支援事業が実施されます。電話やメールで対応する相談支援と相談員が事業所に訪問する個別訪問支援(オンラインにも対応)がありますので、必要に応じて活用したいものです。
自主点検表の32のチェック項目はいずれも派遣事業の運営状況をチェックする上で重要なものばかりですが、あえて実務上のポイントとなる項目をピックアップすると以下のような点が挙げられます。

(6)雇用安定措置の希望聴取
 雇用安定措置を講ずるに当たっては、特定有期雇用派遣労働者に対して、希望する雇用安定措置の内容を聴いていますか。
 ①聴いている ②ケースバイケースの対応としている ③聴いていない ④特定有期雇用派遣労働者はいない 
(17)均等・均衡待遇の確保
派遣労働者について、均等・均衡待遇の確保(不合理な待遇差解消)のた
めの対応を行っています。
 ①派遣先均等・均衡方式によって対応している
 ②労使協定方式によって対応している
 ③派遣先に応じて①②のいずれかの方式で対応している
 ④派遣先の希望等によって①、②の方式を変更している
 ⑤特に対応していない
(19)雇用しようとする者への説明・明示
 派遣労働者として雇用しようとする労働者に、次のことを説明・明示していますか。
 ㋐派遣労働者であること ㋑賃金額の見込み ㋒労働・社会保険の資格取得 ㋓想定される就業時間・就業日・就業場所・派遣期間 ㋔教育訓練 ㋕福利厚生等 ㋖派遣会社の概要 ㋗労働者派遣制度の概要 ㋘段階的かつ体系的な教育訓練・キャリアコンサルティングの内容
 ①すべてについて書面の交付、ファクシミリ、メール(書面の交付等)により説明(㋐は明示)している 
 ②賃金見込みは書面の交付等により、その他は口頭、ホームページにより説明(㋐は明示)している
 ③説明はすべて口頭又はホームページにより説明している
 ④実施していない

 雇用安定措置については令和3年で派遣労働者本人の希望の聴取義務が課せられ、その結果は派遣元管理台帳に記載しなければなりません。派遣元管理台帳に該当する派遣労働者のすべてについて、希望聴取日時と聴取した内容について記載されているかどうかを再確認しましょう。
 派遣労働者の同一労働同一賃金(不合理な待遇差の解消)については、派遣先均等・均衡方式、労使協定方式のいずれかを選択して実施しているかの点検が必要です。両方式の選択・適用はあくまで派遣元の判断による必要があるため、「④派遣先の希望等によって①、②の方式を変更している」という回答は根本的に改善が必要となります。
 派遣労働者の待遇に関する事項の説明義務のうち、「待遇に関する事項等の説明(登録者等)」については令和3年改正により、「キャリアアップの教育訓練」と「キャリアコンサルティングの内容」の項目が追加されています。㋑賃金の見込みについては書面の交付等の方法に限られ、「③説明はすべて口頭又はホームページにより説明している」は明らかに改善が必要な例となりますので注意しましょう。
 自主点検表の点検・回答は数十分あれば実施することができますが、同時に上記のような項目について派遣元管理台帳や待遇に関する事項等の説明などが現場でどのように記載され運用されているかを実際にチェックすることもとても大切です。これからの派遣事業のさらなる飛躍のためにも、自主点検表のチェックを事業の運営状況を現場レベルで確認する機会に充てたいものです。
なお、点検結果を回答したことによって労働局から指導を受けたり、不利益な処分を受けることを心配する人もいるかもしれませんが、「専用WEBサイトに入力いただいた自主点検結果については、厚生労働省においては、統計処理された集計データ以外は使用することはなく、各事業所を特定するいうな形での使用は行いません」(リーフレット)とされています。
自主点検表によるセルフチェックは、あくまで自主的な点検・回答が求められるものですが、基本的には速やかに点検・回答することが望ましいものです。自主点検項目については、それぞれの項目ごとに詳しい解説も準備されていますので、これらも参考にしつつ全体を理解した上でチェック・改善を進めていきたいものです。