結論からいえば、やはり就業規則の定めがないと定額残業代の仕組みは認められません。
定額残業代を認めた関西ソニー販売事件(昭和63年10月26日大阪地裁)では、同社の給与規則の規定を前提に残業代支給の実態を評価し、定額残業代の考え方を容認しています。
これに続く裁判例となった東和システム事件(平成21年12月25日東京高裁)でも、やはり給与規程の内容が事実の評価の前提となっており、定額残業代を認めています。
就業規則の規定の根拠なしに定額残業代の存在が認められた例は、基本的に見当たらないといえます
そもそも手当の決定方法や計算方法は、必ず就業規則に記載しなければいけない事項とされています。
10人未満の会社は就業規則を労働基準監督署へ届出する義務は負っていないというだけで、作成や周知をしなくてもよいというわけではありません。
ですから、就業規則の届出義務がない会社でも、就業規則の根拠なし解雇処分や懲戒を与えることができないのです。
この件も、同様に理解することができると思います。
「従業員数人しかいないから、契約書を交わしただけで定額残業代ということにしている」
このような場合は、定額残業代という取り扱いじたいに疑問が投げかけられます。
少なくとも争いになった場合には、ほぼ会社の主張が斥けられると考えられるでしょう。十分に気をつけていきたいものです。