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ナデック通信

2018年
1月号

2018年からの労働法改正と働き方改革!

2018年は、「働き方改革」が本格的に具体化されていく年といわれています。昨年から新聞やテレビなどでも毎日のように取り上げられ、多くの国民の関心事でもある「働き方改革」ですが、安倍首相の年頭記者会見でも最重点政策と位置付けられていることから、今年具体的に改正の流れが加速していくことは間違いないといえるでしょう。

安倍首相は、1月4日の三重県伊勢市での年頭記者会見で、「働き方改革」について具体的に以下のように発言しています。

本年、働き方改革に挑戦いたします。正規、非正規、雇用形態にかかわらず、昇給や研修、福利厚生など、不合理な待遇差を是正することで、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

長時間労働の上限規制を導入し、長時間労働の慣行を断ち切ります。ワーク・ライフ・バランスを確保し、誰もが働きやすい環境を整えてまいります。70年に及ぶ労働基準法の歴史において、正に歴史的な大改革に挑戦する。今月召集する通常国会は、働き方改革国会であります。

子育て、介護など、それぞれの事情に応じた多様な働き方を可能とすることで、一億総活躍の社会を実現してまいります。

年頭記者会見では、防衛、社会保障、経済政策などについても触れられていますが、具体的に今年の通常国会のテーマとされることが述べられているのは「働き方改革」のみです。メディアでは憲法改正のテーマが大きく取り上げられましたが、記者会見では「今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく」と述べるにとどまっています。これは記者会見後の質疑応答で「働き方改革」についての質問がなかったことにも影響されていると思われます。

「働き方改革」についての発言部分を引用しましたが、ここから改正に向けた概略の流れと首相の意気込みを読み取ることができます。引用部分を便宜上3つのパラグラフに分けましたが、1つ目は「同一労働同一賃金」、2つ目は「長時間労働の上限規制」、3つ目は「子育て・介護との両立支援」の内容となっています。発言の順番からすると、①同一労働同一賃金→②長時間労働の上限規制→③子育て・介護との両立支援となっており、①同一労働同一賃金が優先順位の高い看板政策であることが読み取れます。

ただ、それぞれのテーマへの具体的な言及の仕方をみると、①同一労働同一賃金が「不合理な待遇差を是正することで、多様な働き方を自由に選択できるようにします」、③子育て・介護との両立支援が「それぞれの事情に応じた多様な働き方を可能とすることで、一億総活躍の社会を実現してまいります」といった政策目標的な抽象表現になっているのに対して、②長時間労働の上限規制のみは「70年に及ぶ労働基準法の歴史において、正に歴史的な大改革に挑戦する。今月召集する通常国会は、働き方改革国会であります」と具体的なスケジュール感のある表現となっており、「通常国会は、働き方改革国会」とまで踏み込んでいます。
 
 
 
そもそも、①同一労働同一賃金はパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法等の改正が想定されているものの、基本的にはガイドライン案の法制化の流れを目指すものであるため、罰則付きの強制力を持たせた改正とはやや意味合いが異なり、③子育て・介護との両立支援は昨年3月の「働き方改革実行計画」の中では「子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労」という括りで位置づけられているものの、基本的には保育士・介護人材の処遇改善や育児介護休業法、次世代育成支援対策推進法等による既存の政策の徹底・強化が想定されている内容です。

それに対して、②時間労働の上限規制はそもそも罰則付きで時間外労働の限度を具体的に定める法改正が想定されている点で他の2つとは位置づけが異なりますが、さらに首相の年頭記者会見でも、今年の通常国会を「働き方改革国会」と位置付け、長時間労働の上限規制を導入によって70年に及ぶ労働基準法の大改革を行うという方針が示されたことで、さらに今年の法改正の流れが具体的に明瞭になったということができるでしょう。
 
 
 
仮に今年の通常国会で労働基準法等の改正案が可決・成立したとしても、施行時期については当初の見込みよりも1年ずれて、2020年の春になるという見方が強まっています。そうすると、具体的な法改正への対応や対策への時間にも少しは余裕ができることになるかもしれません。ただ、当然のことですが労基法はあらゆる労働法の要めである強行法規ですから、そのルールが抜本的に変わることへの対応や対策は、他の改正の流れよりも重いものであることはいうまでもありません。

法改正の内容については、現行法で原則とされている時間外労働の限度である月45時間、年360時間のルールが、従来から特例と認められてきた臨時的な特別な事情があり労使協定を結ぶ場合についても、上回ることができない上限を設けるという点が目玉です。この上限は年720時間とされ、罰則付きによる強制力をもって運用されることが想定されています。
 
 
 
建設や運輸、医療などの一部の事業には経過措置や緩和措置が想定されていますが、労基法のルール自体は基本的に適用に例外はないため、いずれの事業についても何らかの対応が必要になっていきます。時間外労働や休日労働が慢性化している会社や部門については、今年の改正を見通した早め早めの対策が急務となっていきます。

具体的な対策としては、時間外労働や休日労働を削減するか、効率化による生産性の向上等に取り組むことしかありませんが、これらの2つを組み合わせたり、併行して取り組むことが理想だといえるでしょう。今年は「働き方改革」のスタートの年となることは間違いないと思います。企業においても、具体的な改善や変革を本格化する年にしてきたいものです。