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ナデック通信

2107年
9月号

労働基準法の改正に向けて取り組むべきことは?

まだまだ日中は厳しい残暑が続きますが、9月ということで秋。

秋になると労働法の改正の動きが加速するものですが、今年は例年とは比較できないくらいに大きな流れになりそうですね。

9月下旬からの臨時国会で審議される予定なのが、労働基準法改正案と同一労働同一賃金関連の法律案。

この2つが一括法案として提出されるというのが政府の方針のようですが、このうち労働基準法改正案については、8月30日の労働政策審議会労働条件分科会で概要が示されました。

時間外労働の規制の抜本的な強化については労働基準法の大枠にも関わる点なので、おそそ30年ぶりの大改正だといっても過言ではないでしょう。

審議会に示された改正案の概要は、次の内容です。
 
 

 
Ⅰ 長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策等

(1) 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
窶「 月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。(3年後実施)

(2) 著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設
窶「 時間外労働に係る助言指導に当たり、「労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない」旨を明確にする。

(3) 一定日数の年次有給休暇の確実な取得
窶「 使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はない)。

(4)企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進(※労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正)
窶「 企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組を促進するため、企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができることとする。
 
 
 
Ⅱ 多様で柔軟な働き方の実現

(1) フレックスタイム制の見直し
窶「 フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長する。

(2) 企画業務型裁量労働制の見直し
窶「 企画業務型裁量労働制の対象業務に「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」を追加するとともに、対象者の健康確保措置の充実や手続の簡素化等の見直しを行う。

(3) 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
窶「 職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。
窶「 また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととする。(※労働安全衛生法の改正)

 
 
 
 

これらの中でも特に注目したいのが、(1)中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直しと、(2)著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設。

中小企業の60時間超の時間外労働への5割の割増賃金の適用は当面の間、猶予されていましたが、これが撤廃されることへの影響は大きいと予想されます。

サービス業や営業職などを中心に営業上、時間外労働の抑制が困難な業種・業態もたくさん存在しますが、60時間超の割増賃金が倍になるとそもそもの人件費の総枠が変わることにもなります。

パートやアルバイトを多く雇用する事業所では最低賃金の引き上げが直撃しますが、それとも相まって場合によっては労務管理全体の見直しを強いられるケースも出てくるでしょう。
 
 
 
 
また、現在は事実上の拘束力がない36協定の限度基準が、改正後は罰則の対象となることになります。

言葉は悪いですが、今までは青天井の「特別条項」で対応していた多くの事業所の多くは、改正後は違法なだけでなく、「罰則」が与えられるということです。

そもそも例外が認められていることにより適法だった扱いが、法律上違法となるだけでなく、罰則の対象となることは、天と地ほど違うルールの変更です。

労働基準法違反の事業所への厳しい行政指導や、「企業名公表」の対象となるケースが増えてきていますが、これがさらに加速していくことが予想されます。

これからは36協定の持つ意味がさらに重くなり、いかに丁寧に実務対応していくかが問われることになるでしょう。
 
 
 
 
さらには、(3)一定日数の年次有給休暇の確実な取得も、大きな改正点となります。

年5日の有給休暇が強制的に付与されることになり、これに違反した事業主には罰則が適用されることになると、今までの労働基準法の有給休暇の立て付けとは抜本的に変わることになります。

これからは有給休暇は労働者が会社にお願いするものではなく、会社が労働者にお願いするものになっていくという発想かもしれませんね。
 
 
 
 
これらの改正(案)に向けて会社が取り組むべきことは、それぞれの労働者の勤務実態と働きぶり(評価)の管理を徹底することです。

今までは、労働者が自発的に残業するのは当たり前であり、またその結果(成果)が短期的に判断できないのは、やむを得ないという風潮が一般的でした。

これからは、ダラダラ残業を許す会社はコンプライアンス違反を問われ、労働者がより生産効率を高めて働く仕組みを作れない会社は完全に競争力を失うことになります。

国が会社に対する規制を強化するというよりは、会社と労働者が一致してこれからの働き方を考え実践していくことが求められる、というのが実際だと思います。

秋が深まるつれて、来年以降に向けた変化に流れはスピードアップしていきます。

「まだ早い」と思わず、ぜひ改正後の御社の働き方について、「見取り図」を描いていただきたいものです。