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ナデック通信

2017年
2月号

派遣会社の「キャリア形成支援制度」はどう作るか?

派遣労働者のキャリアアップが大きなテーマとなっています。
いわゆる「キャリア・コンサルティング」と「キャリア形成支援制度」。
平成27年の派遣法改正により、これらのキャリアアップ措置の要件を満たさないと派遣事業の許可は取得できず、更新もできないため、派遣会社によっては死活問題となっています。
みなさんからの質問や疑問もとても多いため、今回はこの具体的な内容について触れることにします。
 
 
 
 
派遣法では30条の2で規定されていますが、今でも具体的な内容がイメージしづらいという人も多いです。

第30条の2 (段階的かつ体系的な教育訓練等)
 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように教育訓練を実施しなければならない。この場合において、当該派遣労働者が無期雇用派遣労働者(期間を定めないで雇用される派遣労働者をいう。以下同じ。)であるときは、当該無期雇用派遣労働者がその職業生活の全期間を通じてその有する能力を有効に発揮できるように配慮しなければならない。
2 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の求めに応じ、当該派遣労働者の職業生活の設計に関し、相談の機会の確保その他の援助を行わなければならない。

1項で「キャリア形成支援制度」、2項で「キャリア・コンサルティング」について規定しています。
これを見ても分かるように、両者の位置づけはまったく違います。
条文上からも、何となく「キャリア形成支援制度」の方がより重要視されていることが読み取れるでしょう。

ちなみに、業務取扱要領における「派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度の内容に関する判断」では、以下の項目が具体化されています。

(a)段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること。
(b)キャリアコンサルティングの相談窓口を設置していること。
(c) キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続が規定されていること。
(d)少なくとも最初の3年間は毎年概ね8時間以上。
(e)教育訓練計画を派遣労働者に等に周知する。
 
 
同様の内容については大臣基準等でも定められ、これらについて派遣元の許可取り消しを含めた厳しい指導監督が実施されることになっています。

それでは、「キャリア形成支援制度」「キャリア・コンサルティング」の具体的な流れについて見てみましょう。

キャリア形成支援制度とキャリア・コンサルティングは、本来は密接に関連していますが、少なくとも許可申請実務としては、まったく別物です。

「キャリア形成支援制度」については、すべての派遣労働者に実施されないと許可取得(更新)ができません。それ以前に、そもそも派遣法違反です。

「キャリアコンサルティング」については、希望者全員に対して実施するために窓口を設置することが法的な義務です。

「キャリアコンサルティング」 を誰が行うのか?という点については今でも若干の誤解がありますが、このハードルは意外と低いです。

①キャリア・コンサルタント(有資格者
②キャリア・コンサルティングの知見を有する者(職業能力開発推進者、3年以上の人事担当の職務経験がある者等)
③派遣先との連絡調整を行う営業担当者

上記の①~③のいずれかとなります。現在のところ③が存在するため、この担当者自体を選任するのは難しくないと思います。

それでは、「キャリア形成支援制度」 は、誰が作って、実施するのでしょうか?

この点については、意外と勘違いされている人が多いです。

キャリアに関する専門資格者といえばキャリアコンサルタントということになりますが、この「キャリア形成支援制度」については必ずしもそうとは限らないケースもあります。

もちろん会社の方針や実態に合わせて構築・運用することになりますが、絶対に外すことができない人がいます。

それは、いうまでもなく、「派遣元責任者」です。

派遣元責任者には、以下の役割と責任が与えられています。

①派遣労働者であることの明示等
②就業条件等の明示
③派遣先への通知
④派遣元管理台帳の作成、記載及び保存
⑤派遣労働者に対する必要な助言及び指導の実施
⑥派遣労働者から申出を受けた苦情処理
⑦派遣先との連絡調整
⑧派遣労働者の個人情報に関すること
⑨当該派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活設計に関する相談の
機会の確保に関すること
(ア) 段階的かつ体系的な教育訓練の実施に関すること
(イ) キャリア・コンサルティングの機会の確保に関すること
⑩安全衛生に関すること(派遣元事業所において労働者の安全衛生を統括管理する者及び派遣先との連絡調整)

すなわち、「キャリア形成支援制度の実施」と「キャリアコンサルティングの機会確保」は、「派遣元責任者」の職務です。

そして、両者の表現の違いにも注意したいものです。

それでは、「キャリア形成支援制度」はどのように作ったらよいのでしょうか?

これも決められた方法があるわけではありませんが、私がおすすめしているのは以下の流れです。

教育訓練計画を策定する(事務手引、マニュアル、就業規則)

計画書を作成する(キャリア計画書、様式3号ー2)

実施、報告する(事業報告書)

教育訓練計画を策定としては、大きく以下の3点があります。

・キャリア形成を念頭においた 派遣先の提供のための事務手引
・教育訓練計画(様式は自由)*ここが最大のポイント!
・就業規則(訓練中の労働時間)

なかでも、教育訓練計画をどう作るかが、キャリア形成支援制度の一番のポイントです。

当然のことですが、他社の事例のコピペのレベルでは、労働局は絶対に受理してくれません。

なお、教育訓練計画は、「派遣元責任者」を中心とする体制で、構築することが想定されています。

派遣法 第36条5項 当該派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活の設計に関する相談の機会の確保に関すること。

教育訓練計画の策定にあたっては、以下のようなポイントがあります。

まず、派遣業務ごとに、

・段階的(1年、2年、3年・・・)
・体系的(カリキュラム)

の派遣就業に必要な技能及び知識内容を検討する。

具体的には、

・教育時期(入職時、1年・・・)
・教育項目(名称とレベル)
・教育内容(具体的に!)

ごとに実際に派遣先でやっている業務について、より習熟度を上げ、次のステップを意識できるような視点から具体的に落とし込む。

もちろん、eラーニングなどを活用する方法もありますが、法律的な枠組みと標準的な流れについては、基本的には共通してくるはずです。

ぜひ、自社の状況に即した教育訓練計画を策定・運用していただきたいものです。

なお、「キャリア形成支援制度」について、具体的な作成や運用方法をお伝えするセミナーを1月28日に開催しました。

このセミナーでは、特定社労士の小岩が講師を務め、さらに岐阜県の人材派遣会社のキャリアアップ責任者の方にも登壇していただきましたが、「とても分かりやすい」と好評でした。

その続編を3月25日に開催する予定です。詳しい内容を知りたい方は、以下までお問合わせください。

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