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ナデック通信

2016年
8月号

契約社員に手当を支給しないと違法に!?

同じ仕事をしているにも関わらず、正社員には支給されている手当等が、契約社員には支給されないのは不当であると争った裁判の高裁判決が出ました。

ハマキョウレックス事件、大阪高裁、平成28年7月26日

この判決では、労働契約法20条を根拠として、正社員に支給している通勤手当、無事故手当等を契約社員に支給しないのは違法だと判断しました。

第一審の大津地裁彦根支部(平成27年9月16日)では、通勤手当についてのみ違法無効だと判断されていたため、それよりも企業側に厳しい内容です。

契約社員の手当について高裁が判断をしたのは初めてのケースであるため、大きなニュースとなり各方面から注目されています。
 
 
 
労働契約法20条とは、以下の条文のことをいいます。

(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

第二十条  有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

ごくごく簡単にいうならば、正社員と同じ仕事をしている契約社員(有期雇用)の労働条件は、業務内容や責任、配置変更等の事情からして合理的だと判断される場合でなければ、正社員(無期雇用)との間に差をつけてはいけない、ということです。

正社員と契約社員との間の均衡処遇を目的としたこの条文は、平成25年の施行当初はそれほど大きな問題とされることはありませんでしたが、ここ数年で裁判を通じた争いになるケースも増えてきています。

正社員と同じような仕事をしている契約社員がいるという場合、当然のことながら正社員と契約社員とでは、給与体系も異なれば手当も違うというケースは多いものです。

今後はこういったケースでも待遇の違いが合理的なものでない場合には、手当等を支給しないことが違法であるという判断が裁判所によって下される可能性があります。

今回の事件でも争われた運送業のドライバー等の場合には、正社員と契約社員との業務内容の違いが分かりにくいことが多いため、とりわけ注意する必要が高いといえるでしょう。
 
 
 
正社員と同じような仕事をしている契約社員に対して、すべて正社員同様の処遇をしなければならないというわけでは、もちろんありません。

逆に、正社員と契約社員との待遇面の違いを制度的にも明確にしていくことが、合理的な労働条件の差異であることを根拠づけ、無用の混乱を避けることにも結びつきます。

正社員と契約社員との違いを考える上で特に留意しなければならないのは、次の点です。

①業務内容が違う
②責任の程度が違う
③配置変更の範囲が違う

具体的にはそれぞれ以下のような点に気をつけていく必要があるでしょう。
 
 
 
①業務内容が違う

正社員が担うべき業務内容を明文化する(就業規則の別規程等が理想)。逆に、契約社員しか担当しない業務をつくる。契約社員には原則として時間外労働をさせない。
 
 
②責任の程度が違う

正社員が持っている裁量や権限を明文化する(就業規則の別規程が理想)。契約社員やパート、アルバイトに関して正社員が指導監督を行う。社内決済について正社員が印鑑を押す。
 
 
③配置変更の範囲が違う

転勤や人事異動は正社員を対象とし、契約社員は対象外とする。規定上、正社員に転勤がある場合は、ある程度の実態が伴うことが必要となる。
 
 
 
ハマキョウレックス事件の地裁判決では、正社員と契約社員との間の職務内容や配置の変更の範囲等を理由に、通勤手当についてのみ違法無効だと判断されました。

しかし、高裁判決では、通勤手当のほか、無事故手当、作業手当、給食手当についても、正社員の職務内容とは無関係であることを理由に、契約社員に支給しないのは違法と判断されました。

いずれも正社員と契約社員との待遇面での相違が、会社の経営・人事制度上の施策として不合理なものとはいえないと判断している点は共通しています。

その上で地裁と高裁とで判断が分かれ、より企業側に厳しい方向に傾きつつあることには、注目しなければなりません。

皆勤手当、家族手当や賞与、退職金については、高裁も正社員にのみ認められたものだと判断しています。

正社員と契約社員とに共通する職務内容とは無関係だという考え方に立っていますが、このあたりが今後の訴訟等でどのように判断されていくかはまだまだ流動的かもしれません。
 
 
 
いずれにしても、何となく正社員と同じ仕事をしている契約社員がいるといった雇用管理は、根本的に通用しない時代になってきています。

業務内容に違いがあるか、少なくとも責任の程度に違いがあるといった実態を伴うことが大切でしょう。

みなさんの会社の契約社員さんは、どのような仕事をされていますか?

もう一度、待遇や人事制度のあり方について、チェックしていただきたいものです。