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ナデック通信

2013年
1月号

会社の発展を願う経営者が新年に考えるべきことは?

年明けの大発会では、1年10か月ぶりに日経平均が1万600万円代を回復し、東日本大震災以前の水準を回復しました。円も88円代に突入し、2年5か月ぶりの円安ドル高水準となりました。
多くのエコノミストたちも、今年は順次景気が回復していき、日本を取り巻く全般的な経済状況が好転していくと予測します。年末年始ごとに不況や株安、失業や派遣村といった暗い話題を目にしてきた私たちには、夢のような話に思えます。
 
その一方で、日本が活気あふれる方向に向かっているかというと、必ずしもそうだと回答する人は多くはないはずです。それどころか、何ともいえない静けさの中、今までにないような閉塞感に向かっているように思えてならないのは、私だけではないでしょう。
 
実際に中小企業を経営する立場に身を置けば、今ほど先行き不透明な時代はありません。株高や円安に沸くとはいっても、国内を見る限り、ビジネスの現場に好況感はほとんどありません。それどころか、原油高、原料高は続き生産コストは高騰し、人件費や社会保険料の負担増も重くのしかかります。
さらには、震災復興による増税がいよいよ企業の財布を直撃する一方、いわゆる団塊の世代の引退による人材の空洞化は深刻です。若い世代を採用しようにも、ミスマッチは広がるばかりであり、仮に良い人材を確保できたにしても、数年を経ずに旅立って行かれるケースが後を絶ちません。
 
これでは、うかうか明るい時代になりそうだとはいえないのは、無理からぬことです。
   
   

会社の発展を願う経営者が新年に考えるべきこととは、何なのでしょうか?
私は次の3点だと考えています。
 
① 創業の原点と、他社に負けない商品(サービス)を改めて認識する
② 1年ではなく、少なくとも3年のスパンで事業計画を立て、共有する
③ 全社員が守るべき約束事を決め、上司に諌言できる部下を育てる
 
 
① は他でも述べていますので割愛するとして、ここでは③について考えてみます。

   

今ほど、従業員の採用や教育の重要性が叫ばれる時代はありません。それは、人を迎えて、育て上げ、定着させることが難しい時代になったことの裏返しです。かつてであれば長く会社に勤めるほど給料が上がり続けるのが「ふつうの会社」でしたが、今ではそんな姿は幻想に近い。だから、「若い人が定着しない」とはいっても、そう簡単に責める気にもなりません。
もちろん、どの業界にも、業績をぐんぐん伸ばしている右肩上がりの会社はあります。同業他社からしたら、羨ましいかぎりだと思います。当然のごとく、それらの会社の給料は高く、なおかつ伸びていっています。働く側にとっても、これほどラッキーなことはないでしょう。
ところが、そんな素晴らしい会社に限って、社内に大きな問題を抱えているものです。

ある地域で業界ナンバーワンの会社の社長には、可愛いひとり息子がいました。社長は、いずれ後継者にという思いで大切に育て、若くして役員に抜擢しましたが、実際には成長するにしたがい社長との考え方の違いが際立つようになり、ことあるごとに衝突するようになっていきました。どうにも折り合いがつかず、最終的には、息子は独立することになったのです。
さて、その息子の会社は、設立以来、毎年売上倍増の勢いの急成長を遂げました。もともと彼自身が営業マンや技術マンとして有能だったこともありますが、幼い頃から父が歩んできた姿を追い続け、若くして経営の現場に立ってきたことの蓄積が、より彼の成長を加速させたのです。
従業員も順調に増え、給料もしっかり上がり、若い社員たちには十分過ぎる賞与も支払われました。従業員にとっても、とても幸せな職場であったことは間違いないでしょう。

しかし・・・。
数年後、この会社はとても悲しい方向に行ってしまうことになりました。業績が急速に落ち込んだわけでも、突如として強力なライバルが出現したわけでもありません。あくまで数字的には好調を維持したまま、閉塞を迎えてしまったのです。
懸命な方なら、これが何を意味するものなのか、きっと察しがつくでしょう。
そして、こんな例は、決して1社や2社のことでは、ありません。

 
 
原因は、急成長の影にこそ、ありました。
あまりに短期間で成長したので、社員が守るべき約束事が存在しなかったのです。
あれこれルールを意識しなくても、とにかく前に進めばうまくいきました。
頑張ればどんどん給料が上がっていったので、組織のあり方に疑問を持つ人もいませんでした。
結果として、気持ちの緩みや心のたるみが生まれる余地が出てきました。

見渡すと、そこには上司に諌言できる部下が誰ひとり育っていなかったのです。
決して、彼が咎められるような過ちを犯したわけではありません。
とはいえ、いかに優秀とはいえ人間、もとより完璧ではありません。
人の上に立つ者は、向上したいという意思が強いほど、ときとして均衡を逸した発想や言動を行うことがあります。
そんなときに、恐れずありのままをぶつける直言居士の存在が必要。

事業に失敗したり、社内で大きなトラブルを抱えた社長が、かなりの確率で口を揃える言葉があります。
「自分には、社内にありのままを話せる存在がいなかった」。
社長ですから、ありのままを話せないのは当然のことです。決して、甘えたことをいうべきではありません。
しかし、ときに身を張って諌言してくれる存在を部下に持つことは可能です。
それは、どうにも目障りに感じたり、不都合な存在のように思えることもありますが、得てして会社を正しい方向に導く存在でもあります。

   
江戸時代の藩にも、主君押込といった制度がありました。藩のことを思えばこそ命を張って主君に諌言し、それが聞き届けられないときは重臣たちが協議して、押込を実行することもあったのです。
押込というのはもちろん極端な例ですが、主君とは違った目線から藩の行く末を考え、いざというときは覚悟を決めて直言する存在こそ、組織の宝であったことは間違いありません。
これは大名にかぎられたことではなく、部下を持ち、組織(イエや会社)や暖簾を守るべき身にとっては、むしろ自然な働きであったということができるでしょう。

直言居士の部下を持たず、会社の方向を誤らせたり、組織との融和を図ることができない人は、結果として長たる器にないということになります。
そうであればこそ、長の長たる責任の最たるものは、上司に謹言できる部下を育てること。
多くの経営者は、この重要性に気づかなかったり、あるいは素直に実行できていません。後年になって、不測の窮地に追い詰められたり、取り返しのつかない苦労を強いられるケースが、本当に後を絶たないのです。

   
会社の発展を願う経営者が新年に考えるべきこと。
その第一は、「あなたには、歯に衣を着せずに諌言できる部下がいますか?」の問いに答えること。
いないのであれば、なぜそうした存在が育たないのか?
そして、これからどうやって育てていくのか?
向き合うべきテーマは、広がっていきます。

新年だからこそ、この経営にとって最も難解で宿命的な問いに対して、襟を正して正々堂々と挑んでいただきたいものです。